警備職 完全ガイド|仕事内容・年収・資格・転職のすべて

警備職は、未経験からでも挑戦でき、年齢に関係なく長く働ける職業として注目を集めています。ビルやオフィス、商業施設の安全を守る施設警備から、工事現場での交通誘導、現金輸送、要人警護まで、その仕事内容は多岐にわたります。
この記事では、警備職への転職を検討している方に向けて、警備業界の基礎知識、具体的な仕事内容、年収や待遇、必要な資格、キャリアパス、そして実践的な転職ステップまで、すべての情報を網羅的に解説します。警備職という職業の全体像を理解し、自分に合った働き方を見つけるための完全ガイドです。
警備職とは|基礎知識と業務概要
警備職とは、人々の生命・身体・財産を守り、社会の安全と秩序を維持する重要な職業です。ビルや商業施設の巡回、交通誘導、現金輸送、要人警護など、私たちの日常生活を支える様々な場面で活躍しています。
警備業は警備業法という法律によって厳格に規制されており、業務の範囲や警備員の資質、教育制度まで詳細に定められています。単なる「見回り」や「立ち番」ではなく、専門的な知識と技能が求められる職業として、社会的に確立された地位を築いています。
警備職の定義と社会的役割
警備職は、依頼者との契約に基づき、事故や犯罪の発生を警戒し、人々の安全を確保する民間の専門職です。警察とは異なり、逮捕権などの強制力は持ちませんが、施設や人の安全を守るという点で重要な社会的役割を果たしています。
現代社会では、24時間営業の施設や大規模イベントの増加、サイバー犯罪への対応など、警備のニーズは多様化・高度化しています。特に人手不足が深刻な業界でもあり、未経験者や中高年層の採用に積極的な企業が増えています。
警備員は「安全・安心の最前線」に立つ職業として、災害時の避難誘導や緊急時の初動対応など、人命に関わる重要な責任も担っています。単に「怪しい人を見張る」だけでなく、予防的な観点から事故や犯罪を未然に防ぐプロフェッショナルです。
警備業法で定められた業務範囲
警備業法は1972年に制定された法律で、警備業の適正な運営と警備員の資質向上を目的としています。この法律により、警備業務は以下の4つに区分されています。
1号警備業務(施設警備): 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地などの施設における盗難・火災の防止、人の生命・身体に対する危険の発生を防止する業務です。最も一般的な警備業務で、ビルやショッピングモールでの巡回・監視がこれに該当します。
2号警備業務(交通誘導・雑踏警備): 工事現場や駐車場における車両・歩行者の誘導、祭礼・イベント会場での雑踏整理を行う業務です。道路工事現場での交通誘導や、コンサート会場での人の流れの整理がこれにあたります。
3号警備業務(運搬警備): 現金、貴金属、美術品などの運搬に伴う盗難防止業務です。現金輸送車での貴重品護送やATMの現金管理などがこれに該当し、高い信頼性が求められます。
4号警備業務(身辺警備): 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において防止する業務です。いわゆるボディガードで、VIPや要人の警護を行う特殊な専門性を持つ業務です。
警備業法では、警備員に対する教育制度や欠格事由(前科がある場合など、警備員になれない条件)も定められており、業界全体の質と信頼性を担保しています。
警備業界の規模と市場動向
警備業界は、日本国内で約3兆5,000億円規模の市場を形成しており、約9,000社の警備会社が存在しています。業界全体で約60万人の警備員が働いており、雇用面でも重要な産業です。
大手警備会社としては、セコム、ALSOK(綜合警備保障)、セントラル警備保障、全日警、東急セキュリティなどがあり、これらの企業で市場の大部分を占めています。一方で、地域密着型の中小警備会社も多数存在し、地元企業や施設との長期的な関係を築いています。
近年の市場動向としては、オリンピック・パラリンピック後も都市部の再開発や大規模イベントの需要が継続しており、堅調な成長を維持しています。また、高齢化社会の進展に伴い、医療施設や高齢者施設での警備ニーズも増加傾向にあります。
一方で、業界全体で深刻な人手不足が続いており、AIやIoT技術を活用した省力化、遠隔監視システムの導入など、テクノロジーとの融合による業務効率化が進んでいます。この変化は、警備員の仕事内容にも影響を与えており、従来の「立ち番」から、より専門的な判断力やコミュニケーション能力が求められる職業へと進化しています。
警備職の種類と仕事内容
警備職は、警備業法で定められた4つの業務区分に分かれており、それぞれ仕事内容、勤務形態、必要なスキルが異なります。ここでは各業務の詳細を解説します。
1号警備(施設警備)|最も一般的な警備業務
施設警備は、警備業界で最も多くの警備員が従事している業務です。オフィスビル、商業施設、病院、学校、工場、マンションなどの施設を巡回・監視し、盗難や火災、不審者の侵入を防ぐことが主な仕事です。
主な仕事内容: 施設内の定期的な巡回、監視カメラのモニタリング、入退館管理、来訪者の受付対応、鍵の管理、夜間の施錠確認、火災報知器の点検、緊急時の初動対応などです。近年では、顔認証システムやICカード管理など、最新のセキュリティ設備を扱うケースも増えています。
勤務形態: 24時間体制の施設が多いため、日勤・夜勤の交代制が一般的です。24時間勤務(当直)の場合は、勤務日と休日が交互に来る形になります。立ち仕事と巡回が中心ですが、極端な肉体労働ではないため、幅広い年齢層が活躍できます。
必要なスキル: 観察力、注意力、責任感が重要です。異常を素早く察知する能力や、緊急時に冷静に対応できる判断力も求められます。また、来訪者対応では接客スキルやコミュニケーション能力も必要です。
向いている人: 几帳面で細かいことに気づける人、一定のルーティンワークを着実にこなせる人、夜勤に抵抗がない人に適しています。未経験からでも始めやすく、警備業界の入り口として選ばれることが多い職種です。
施設警備の詳しい仕事内容や年収、未経験からの始め方については、施設警備の仕事内容と年収|未経験からの始め方で詳しく解説しています。
2号警備(交通誘導・雑踏警備)|屋外での警備業務
交通誘導警備は、道路工事現場や建設現場、駐車場などで車両や歩行者を安全に誘導する業務です。雑踏警備は、イベント会場やお祭り、コンサート会場などで人の流れを整理し、混雑による事故を防ぐ業務です。
主な仕事内容: 工事現場での車両誘導、片側交互通行の管理、駐車場での車両誘導、イベント会場での人流整理、列の整理、危険箇所への進入防止などです。誘導灯や警笛を使用し、ドライバーや歩行者に分かりやすく指示を出すことが求められます。
勤務形態: 日勤が中心ですが、夜間の工事現場や早朝からのイベント設営など、時間帯は案件によって異なります。屋外での立ち仕事が基本で、夏の炎天下や冬の寒さの中でも業務を行うため、体力が必要です。
体力面の要求: 施設警備と比べて体力的な負担が大きく、長時間の立ち仕事、気候の影響を直接受ける環境での勤務となります。しかし、その分、夜勤手当や現場手当などが上乗せされるケースが多く、収入面では有利な場合もあります。
必要なスキル: 状況判断能力、危険予知能力、コミュニケーション能力が重要です。工事車両の動きを予測し、歩行者やドライバーに的確な指示を出す判断力が求められます。また、大声で指示を出すことも多いため、ある程度の声量も必要です。
向いている人: 体力に自信がある人、屋外での仕事を好む人、臨機応変な対応ができる人に適しています。現場ごとに環境が変わるため、変化のある仕事を好む人にも向いています。
交通誘導警備の詳しい情報は、交通誘導警備の仕事|道路工事現場の1日と資格をご覧ください。
3号警備(運搬警備)|現金や貴重品を護送
運搬警備は、現金輸送車を使って銀行やATM、店舗などの現金や貴重品を安全に運搬する業務です。高額な金品を扱うため、高い信頼性と責任感が求められます。
主な仕事内容: 現金輸送車での現金・貴重品の集配、ATMへの現金補充、金融機関間の貴重品輸送、美術品や重要書類の運搬などです。通常は2〜3名のチームで行動し、運転担当、積み下ろし担当、警戒担当に分かれて業務を行います。
勤務形態: 日勤が中心で、銀行の営業時間に合わせた勤務が一般的です。運搬先のスケジュールに応じて早朝や夜間の勤務もあります。運転免許(普通免許以上)が必須となる場合が多いです。
高い信頼性の要求: 運搬警備は、数千万円から億単位の現金を扱うこともあり、厳格な身元審査が行われます。前科がないことはもちろん、借金やギャンブル癖など、金銭面での信用も重視されます。
特別な資格要件: 多くの企業では、運搬警備業務検定(貴重品運搬警備業務検定)の取得が推奨または義務付けられています。また、一定期間の警備経験が求められる場合もあり、いきなり未経験から運搬警備に就くことは難しいケースが多いです。
向いている人: 責任感が強く、金銭的な誘惑に強い人、チームワークを大切にできる人に適しています。運転が得意で、安全運転を心がけられる人にも向いています。
4号警備(身辺警備・ボディガード)|特殊な専門性
身辺警備は、VIPや要人、企業経営者、芸能人などの身辺を護衛し、危害から守る業務です。いわゆるボディガードで、警備業務の中で最も高度な専門性と経験が求められます。
主な仕事内容: 依頼者の身辺警護、移動時の護衛、宿泊先のセキュリティチェック、危険人物の排除、ストーカー対策、イベント会場での警護などです。依頼者の行動予定を事前に把握し、リスクを予測して対策を立てることが重要です。
勤務形態: 依頼者のスケジュールに完全に合わせた勤務となり、不規則な時間帯や長時間勤務も珍しくありません。海外への同行や、数日間にわたる連続警護もあります。
高度な専門技能: 身辺警護には、護身術、危険察知能力、緊急時の判断力、運転技術(要人運転)、医療知識(応急手当)など、総合的なスキルが必要です。元警察官、元自衛官、武道経験者などが活躍するケースが多いです。
特殊な資格要件: 身辺警備業務検定(1級・2級)の取得が推奨されます。また、普通救命講習の修了や、運転技術(要人運転講習)の習得も求められることがあります。未経験からいきなり身辺警備に就くことは難しく、通常は施設警備や他の警備業務で経験を積んでからステップアップします。
キャリアパス: 身辺警備は警備業界の中でも高収入が期待できる分野で、経験を積んだベテラン警備員は年収600万円以上を得るケースもあります。独立して個人事務所を開設する人もおり、キャリアの選択肢が広い職種です。
向いている人: 冷静な判断力と瞬発力を併せ持つ人、体力・精神力ともに優れている人、機密保持を徹底できる人に適しています。依頼者との信頼関係を構築できるコミュニケーション能力も重要です。
身辺警護の詳しい情報は、身辺警護(ボディガード)の仕事|高年収4号警備で解説しています。
給与・福利厚生|年収相場と待遇
警備職の給与は、業務の種類、勤務形態、資格の有無、経験年数によって大きく異なります。ここでは、警備職の現実的な年収相場と福利厚生について詳しく解説します。
警備職の平均年収と給与体系
警備職の平均年収は、約300万円〜350万円が相場です。ただし、これは業務内容や勤務形態によって大きく変動します。月給制の場合、月収20万円〜25万円が一般的な水準で、時給制の場合は時給1,100円〜1,500円程度が相場です。
月給制と時給制の違い: 正社員として雇用される場合は月給制が一般的で、基本給に各種手当が加算されます。一方、パート・アルバイトや契約社員の場合は時給制が多く、勤務した時間分だけ給与が支払われます。
基本給の水準: 未経験者の初任給は、月給18万円〜22万円程度からスタートするケースが多いです。大手警備会社の方が基本給は高い傾向にあり、中小企業では若干低めの設定になることもあります。
地域による違い: 都市部(東京・大阪・名古屋など)は人件費が高く、地方都市と比べて月給で2〜3万円程度高い傾向があります。ただし、生活費も都市部の方が高いため、実質的な生活水準は地域差が少ない場合もあります。
給与体系は企業によって異なりますが、多くの警備会社では基本給に加えて、夜勤手当、資格手当、役職手当、皆勤手当などが支給されます。特に24時間勤務や夜勤を含む勤務形態では、手当が収入の大きな部分を占めることもあります。
警備種別による給与の違い
警備業務の種類によって、給与水準には明確な差があります。一般的に、専門性が高く、リスクや責任が大きい業務ほど高収入になる傾向があります。
1号警備(施設警備)の給与: 月給20万円〜25万円、年収300万円〜350万円が相場です。未経験者でも始めやすい反面、給与水準は警備業界の中では標準的です。ただし、24時間勤務や夜勤を多く入れることで、手当による収入増が期待できます。
2号警備(交通誘導)の給与: 日給9,000円〜12,000円、月給換算で22万円〜28万円程度です。屋外での立ち仕事という体力的負担に対して、やや高めの設定になっているケースが多いです。現場手当や危険手当が加算されることもあります。
3号警備(運搬警備)の給与: 月給25万円〜35万円、年収350万円〜450万円が相場です。現金輸送という高い責任を伴う業務のため、施設警備よりも給与水準は高くなります。運転技術や運搬警備検定の資格を持っていると、さらに資格手当が加算されます。
4号警備(身辺警備)の給与: 月給30万円〜50万円、年収400万円〜700万円以上と、警備業界の中では最も高収入です。高度な専門性と経験が必要なため、ベテラン警備員や特別な技能を持つ人材が従事します。
夜勤手当の影響: 施設警備の場合、夜勤(22時〜翌5時)には法定の割増賃金(25%以上)が適用されます。24時間勤務の場合、夜勤時間帯の手当が大きく、月給に3〜5万円程度上乗せされることもあります。
資格手当: 警備業務検定の資格を持っている場合、月額3,000円〜10,000円程度の資格手当が支給されます。1級検定の場合はさらに高額になることもあり、資格取得は収入アップの確実な手段です。
警備員の年収について詳しくは、警備員の年収を徹底分析|平均給与・業務別・年齢別をご覧ください。
各種手当と福利厚生制度
警備職では、基本給に加えて様々な手当が支給されます。また、法定福利厚生に加えて、企業独自の福利厚生制度を設けている会社もあります。
夜勤手当: 22時から翌朝5時までの勤務には、法律で定められた深夜割増賃金(25%以上)が支給されます。24時間勤務の場合、この夜勤手当が月収を大きく押し上げる要素になります。
資格手当: 警備業務検定(2級で月3,000円〜5,000円、1級で月5,000円〜10,000円程度)、警備員指導教育責任者(月10,000円〜20,000円)、機械警備業務管理者などの資格を持つと、毎月の給与に手当が加算されます。
皆勤手当: 欠勤や遅刻がない場合に支給される手当で、月額5,000円〜10,000円程度が一般的です。シフト制の仕事では、勤怠の安定性が評価されます。
役職手当: 班長、隊長、現場責任者などの役職に就くと、月額10,000円〜30,000円程度の役職手当が加算されます。マネジメント能力が評価されることで、収入アップにつながります。
社会保険: 正社員の場合、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険の社会保険が完備されています。パート・アルバイトでも、一定の勤務時間を超えると社会保険に加入できます。
退職金制度: 大手警備会社では退職金制度を設けているケースが多いです。中小企業では退職金がない場合もあるため、入社前に確認することが重要です。
有給休暇: 労働基準法に基づき、勤続年数に応じた有給休暇が付与されます。シフト制のため、希望日に必ず休めるとは限りませんが、計画的に取得することは可能です。
その他の福利厚生: 企業によっては、制服貸与、社員寮、資格取得支援制度、健康診断、慶弔見舞金制度などを提供しています。大手企業ほど福利厚生が充実している傾向があります。
福利厚生の詳細については、警備員の福利厚生完全ガイド|法定福利と法定外福利で詳しく解説しています。
昇給・昇格の仕組みとキャリア別年収例
警備職の昇給は、経験年数、資格取得、役職昇進によって段階的に行われます。ここでは、一般的な昇給パターンとキャリア別の年収例を紹介します。
定期昇給: 多くの警備会社では、年1回の定期昇給があり、勤続年数や評価に応じて基本給が上がります。昇給額は年間5,000円〜10,000円程度が一般的ですが、業績や個人評価によって変動します。
キャリア別年収例:
- 未経験1年目(一般警備員): 年収280万円〜320万円
- 経験3年目(検定2級取得): 年収320万円〜380万円
- 経験5年目(班長・検定1級): 年収380万円〜450万円
- 経験10年目(隊長・指導教育責任者): 年収450万円〜550万円
- 現場責任者・管理職: 年収500万円〜650万円
- 身辺警備・専門職: 年収600万円〜800万円以上
これらの数字はあくまで目安で、企業規模や地域、業務内容によって大きく異なります。しかし、資格取得と経験を積むことで、着実に収入を増やせることは間違いありません。
必要な資格とスキル
警備職として働くためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。また、キャリアアップや収入増のためには、各種資格の取得が有効です。ここでは、警備業務を始めるための必須要件から、取得すべき資格まで詳しく解説します。
警備業務を始めるための必須要件
警備員として働くためには、警備業法で定められた基本的な要件を満たす必要があります。特別な資格は不要ですが、以下の条件をクリアしていることが前提です。
年齢制限: 満18歳以上であれば警備員として働くことができます。上限年齢は法律で定められていませんが、企業によっては定年制度(60歳〜65歳)を設けている場合があります。ただし、警備業界は人手不足のため、60代、70代でも活躍している警備員は多数います。
欠格事由: 警備業法第14条により、以下に該当する人は警備員になることができません。
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、執行を終わってから5年を経過しない者
- 最近5年間に警備業法違反により罰金刑を受けた者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- アルコール、薬物の中毒者
- 心身に障害があり警備業務を適正に行えない者
健康面の条件: 警備業務は立ち仕事が中心で、緊急時には迅速な対応が求められるため、一定の体力と健康状態が必要です。企業によっては健康診断を義務付けており、重度の持病や身体的な制限がある場合は、業務内容が制限されることがあります。
学歴・経験: 警備員になるために特別な学歴や職歴は不要です。未経験者でも採用されることが多く、実際に異業種からの転職者が大半を占めています。
これらの要件を満たしていれば、基本的に誰でも警備員としてのキャリアをスタートできます。
新任教育と法定研修制度
警備員として働き始める際には、警備業法で定められた新任教育を必ず受ける必要があります。この教育は、警備業務を適正に行うための基礎知識と技能を習得するためのものです。
新任教育の内容: 新任教育は「基本教育」と「業務別教育」の2つで構成され、合計15時間以上の研修が義務付けられています。
基本教育(最低10時間)の内容:
- 警備業法その他警備業務に関する法令
- 警備員の資質向上に関する事項
- 警備業務の基本原則
- 事故発生時における応急措置
- 護身術の基本
業務別教育(最低5時間)の内容:
- 配属される警備業務(1号〜4号)の具体的な実施方法
- 使用する機器の操作方法
- 現場での具体的な対応手順
新任教育は、実際に現場に配属される前に実施され、座学と実技の両方が含まれます。教育終了後には、理解度を確認するためのテストが行われることもあります。
現任教育: 警備員として働き始めた後も、年に1回以上、継続的な教育訓練(現任教育)を受けることが義務付けられています。この教育では、法令の改正や新しい警備技術、事故事例の共有などが行われます。
これらの法定研修は、警備会社が費用を負担して実施するため、警備員自身が費用を支払う必要はありません。
警備員検定資格の種類と取得方法
警備員検定は、警備業務の専門的な知識と技能を証明する国家資格で、取得することでキャリアアップや収入増につながります。検定には1級と2級があり、業務区分ごとに6種類に分かれています。
検定の種類:
- 施設警備業務検定(1号業務)
- 交通誘導警備業務検定(2号業務)
- 雑踏警備業務検定(2号業務)
- 貴重品運搬警備業務検定(3号業務)
- 核燃料物質等危険物運搬警備業務検定(3号業務)
- 身辺警備業務検定(4号業務)
受験資格: 2級検定は、警備業務に従事している者であれば受験可能です(実務経験は問われない)。1級検定は、2級検定合格後、1年以上の実務経験が必要です。
試験内容: 学科試験と実技試験の2つで構成されます。学科試験では警備業法、関連法令、警備業務の実施方法などが出題されます。実技試験では、実際の警備業務を想定した動作や判断力が評価されます。
合格率: 2級検定の合格率は約30%〜40%、1級検定は約20%〜30%と、決して易しい試験ではありません。しっかりとした準備と勉強が必要です。
取得メリット: 検定合格者は、「検定合格警備員」として現場に配置義務がある施設(空港、原子力施設、大規模商業施設など)で優先的に配置されます。また、資格手当として月額3,000円〜10,000円が支給され、昇進の際にも有利になります。
警備業務検定の詳細については、警備業務検定とは|6種類の資格と取得方法を完全解説をご覧ください。
施設警備検定(1号業務)
施設警備検定は、ビルやオフィス、商業施設などの施設警備に特化した検定です。施設内での巡回、監視、緊急時対応などの知識と技能が問われます。
試験内容は、警備業法、火災予防、不審者対応、鍵の管理、警報装置の取り扱いなどが含まれます。実技試験では、巡回の手順、異常発見時の対応、来訪者への対応などが評価されます。難易度は2級で中程度、1級では高度な判断力が求められます。
取得後のメリットとしては、大規模施設や重要施設での配置が可能になり、キャリアアップの道が開けます。資格手当も加算され、月収が数千円〜1万円程度アップします。
詳しい取得方法は、施設警備2級資格の取得方法|未経験から合格する対策で解説しています。
交通誘導警備検定(2号業務)
交通誘導警備検定は、道路工事現場や駐車場などでの交通誘導業務に特化した検定です。車両や歩行者の安全な誘導、事故防止のための知識と技能が問われます。
試験内容は、道路交通法、交通誘導の手順、誘導灯の使用方法、事故発生時の対応などが含まれます。実技試験では、実際の誘導動作、危険予測、的確な指示出しなどが評価されます。
取得後のメリットとしては、大規模工事現場や高速道路での業務が可能になります。また、交通誘導の現場では検定合格者の配置が義務付けられているケースもあり、求人の幅が広がります。資格手当も施設警備検定と同様に支給されます。
詳しくは、交通誘導警備2級の資格|実技試験の内容と合格のコツをご覧ください。
その他の有利な資格とスキル
警備員検定以外にも、取得しておくと有利な資格やスキルがあります。これらは必須ではありませんが、現場での対応力を高め、キャリアアップにも役立ちます。
普通救命講習: 消防署や日本赤十字社が実施する救命講習で、AEDの使い方、心肺蘇生法、止血法などを学びます。警備現場では緊急事態が発生する可能性があり、この資格を持っていると応急手当の責任者として信頼されます。
防災センター要員: ビルやマンションの防災センターで勤務する際に必要な資格です。自動火災報知設備の監視、消防設備の操作などを行うための講習を受け、修了証を取得します。大規模施設での勤務には必須の資格です。
機械警備業務管理者: 機械警備システム(センサーや遠隔監視装置)を使用する警備業務の責任者として必要な資格です。警備業法で定められた国家資格で、取得すると管理職への道が開けます。
これらの資格を計画的に取得していくことで、警備員としての専門性を高め、収入とキャリアの両方を向上させることができます。
キャリアパスと将来性
警備職は、未経験からスタートして管理職や専門職へとステップアップできる明確なキャリアパスがあります。また、独立開業の道も開かれており、将来性のある職業です。
警備員のキャリアアップルート
警備業界には、実力と経験に応じた段階的なキャリアアップの仕組みがあります。一般的なキャリアパスは以下の通りです。
一般警備員(1〜2年目): 新任教育を受けて現場に配属され、施設警備や交通誘導などの基本業務を担当します。この時期は、警備業務の基礎を学び、現場での経験を積む段階です。2級検定の取得を目指すことが推奨されます。
班長・リーダー(3〜5年目): 経験を積み、2級検定を取得すると、小規模なチームのリーダー(班長)に昇格します。新人警備員の指導や、現場での判断を任されるようになります。この段階では、1級検定の取得や、警備員指導教育責任者の資格取得を目指します。
隊長・現場責任者(5〜10年目): さらに経験を重ね、1級検定や指導教育責任者の資格を取得すると、隊長や現場責任者に昇格します。複数の班をまとめ、現場全体の運営管理を担当します。クライアントとの折衝や、シフト管理、トラブル対応など、マネジメント業務の比重が高くなります。
管理職(10年目以降): 現場責任者としての実績が認められると、営業所の所長や本社の管理部門へと昇進します。警備業務そのものよりも、人材管理、営業、教育訓練など、会社運営に関わる業務が中心になります。年収も500万円〜650万円と、一般的なサラリーマンと同等以上の水準になります。
このキャリアパスは、年功序列ではなく、資格取得と実績によって決まるため、意欲的に取り組めば比較的短期間で昇進することも可能です。
詳しいキャリアパスについては、警備員のキャリアパス完全ガイド|一般警備員から管理職をご覧ください。
管理職・専門職への道
警備業界には、現場の警備員から管理職や専門職へと進むルートが複数あります。それぞれの役割と求められる資格について解説します。
警備員指導教育責任者: 新任教育や現任教育を実施する責任者で、警備会社の営業所には必ず配置が義務付けられています。この資格を取得するには、警備業務の実務経験と、都道府県公安委員会が実施する講習を受講する必要があります。資格取得後は、教育担当者として新人の育成に携わり、月額1万円〜2万円の資格手当が支給されます。
機械警備業務管理者: 機械警備システムを使用する営業所には、この資格を持つ管理者の配置が必須です。国家資格で、試験に合格する必要があります。取得すると、技術的な専門職として、遠隔監視センターや機械警備部門での勤務が可能になります。
営業職への転換: 警備の現場経験を活かして、営業部門へ異動するキャリアパスもあります。クライアント企業への提案営業や、契約更新の交渉など、警備の実務知識が役立つ場面は多く、現場経験者は営業職としても重宝されます。
これらの専門職や管理職への道は、一般警備員よりも高い収入と安定性が期待でき、長期的なキャリアを築くうえで重要な選択肢です。
警備員指導教育責任者資格
警備員指導教育責任者は、警備員の教育・訓練を担当する専門職で、警備会社の営業所ごとに配置が義務付けられています。この資格を取得することで、キャリアの幅が大きく広がります。
資格要件: 警備業務に3年以上従事した経験があり、都道府県公安委員会が実施する「警備員指導教育責任者講習」を受講し、修了試験に合格する必要があります。講習は業務区分(1号〜4号)ごとに分かれており、通常は3〜4日間の集中講習です。
役割: 新任警備員の教育カリキュラムの作成・実施、現任教育の計画・実施、警備業務の指導・監督などを行います。現場の警備員とは異なり、教育・管理に特化した役割です。
給与への影響: 資格手当として月額1万円〜2万円が支給されるほか、役職として「教育責任者」や「教育担当課長」などに昇格するため、基本給も上がります。年収で50万円〜100万円程度のアップが期待できます。
詳しくは、警備員指導教育責任者になるには|必須資格を徹底解説をご覧ください。
独立開業と警備会社設立の可能性
警備業界では、経験を積んだ後に独立して自分の警備会社を設立するという選択肢もあります。独立開業には一定のハードルがありますが、成功すれば大きな収入と自由な働き方が実現できます。
独立開業の要件: 警備会社を設立するには、都道府県公安委員会の「警備業認定」を受ける必要があります。認定を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 欠格事由に該当しないこと
- 営業所ごとに警備員指導教育責任者を配置すること
- 機械警備業務を行う場合は、機械警備業務管理者を配置すること
- 一定の資産を有すること(目安として300万円以上)
必要な資本金: 警備会社の設立には、法人登録費用(株式会社の場合約25万円)、営業所の賃貸費用、機材・制服の購入費、当面の運転資金などが必要で、最低でも500万円〜1,000万円程度の資本が必要です。
警備業認定の手続き: 認定申請には、事業計画書、財務諸表、教育計画書、営業所の配置図、警備員名簿など、多数の書類を提出する必要があります。申請から認定まで約2〜3か月かかります。
独立後の経営: 独立後は、営業活動によってクライアントを獲得し、警備員を採用・教育し、現場を管理する必要があります。安定した収益を得るまでには数年かかることもありますが、軌道に乗れば年収1,000万円以上も可能です。
独立開業は、警備業界での豊富な経験とネットワーク、経営の知識が求められるため、少なくとも10年以上の業界経験を積んでから検討するのが現実的です。
警備業界の現状と動向
警備業界を取り巻く環境は、社会の変化とともに大きく変わりつつあります。人手不足、技術革新、市場の拡大など、業界の最新動向を理解することは、転職を検討するうえで重要です。
警備業界の人手不足と採用状況
警備業界は現在、深刻な人手不足に直面しています。業界全体で約60万人の警備員が働いていますが、需要の増加に対して供給が追いついていない状況です。
人手不足の背景: 警備業界の人手不足には、以下のような要因があります。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 警備業務のイメージ(「きつい」「給料が低い」)による若年層の敬遠
- オリンピック後も続く大規模イベントや再開発案件の増加
- 高齢化社会における医療・介護施設の警備需要の拡大
未経験者の採用状況: 人手不足を背景に、警備業界では未経験者の採用に非常に積極的です。特別なスキルや経験がなくても、やる気と健康状態があれば採用される可能性が高く、「最も転職しやすい業界の一つ」と言えます。
年齢層の変化: 従来は50代〜60代の中高年層が中心でしたが、近年では20代〜30代の若年層の採用も増えています。また、70代でも現役で働いている警備員は多く、年齢による制限は他の業界よりも緩やかです。
採用の難易度: 大手警備会社でも中小警備会社でも、常に求人が出ている状況で、応募すれば面接までたどり着ける確率は非常に高いです。欠格事由に該当せず、基本的な健康状態を満たしていれば、ほぼ確実に採用される状況です。
この人手不足は、求職者にとってはチャンスです。未経験からでも挑戦しやすく、働き始めてから資格を取得してキャリアアップを目指すことが十分可能な環境が整っています。
テクノロジーの導入と業務の変化
警備業界では、AI、IoT、ロボット技術などの最新テクノロジーの導入が進んでおり、警備員の仕事内容も変化しています。
AI・IoT技術の導入: 監視カメラにAI画像認識技術を組み合わせ、不審者や異常行動を自動検知するシステムが普及しています。これにより、警備員は膨大な映像を常時監視する必要がなくなり、AIが検知した異常に対して対処するという、より専門的な役割にシフトしています。
遠隔監視システム: 複数の施設を一つのセンターから遠隔監視するシステムが拡大しています。センサーやカメラの情報を集約し、異常があれば現地に警備員を派遣する仕組みで、効率的な警備体制が実現されています。
顔認証技術: オフィスビルや商業施設では、顔認証システムによる入退館管理が増えています。警備員は、システムで判定できない来訪者への対応や、緊急時の判断など、より高度な業務に集中できるようになっています。
ドローン警備: 広大な敷地や危険な場所の巡回にドローンを活用する試みが始まっています。警備員がドローンを操作して上空から監視し、人が立ち入りにくい場所の安全確認を行うなど、新しい警備スタイルが生まれています。
警備員の役割の変化: テクノロジーの進化により、単純な「見回り」や「監視」の仕事は減少し、AIやシステムが検知した異常への対応、来訪者とのコミュニケーション、緊急時の判断など、人間にしかできない高度な業務が中心になっています。これは、警備員に求められるスキルが変化していることを意味し、コミュニケーション能力や判断力がより重要になっています。
2025年以降の業界展望
警備業界の今後の展望は、社会の変化とともに新たな需要が生まれる一方で、技術革新による業務の効率化も進むと予想されます。
東京五輪後の市場変化: 2020年の東京オリンピック・パラリンピックは終了しましたが、その後も大阪・関西万博(2025年)や、都市部の再開発プロジェクトが継続しており、大規模イベントや建設現場での警備需要は依然として高い水準を維持しています。
高齢化社会と警備需要: 日本の高齢化が進む中、医療施設、介護施設、高齢者向け住宅などでの警備・見守りサービスの需要が拡大しています。また、一人暮らしの高齢者宅への巡回サービスなど、新しい形の警備サービスも登場しています。
再開発需要: 都市部では老朽化したビルや施設の建て替え、再開発プロジェクトが数多く計画されており、工事現場での交通誘導警備の需要は今後も継続します。特に東京、大阪、名古屋などの大都市圏では、2030年代まで安定した需要が見込まれます。
今後の成長分野:
- サイバーセキュリティとの融合: 物理的な警備とサイバーセキュリティを組み合わせた総合的なセキュリティサービス
- スマートシティ警備: IoTで連携した都市インフラの監視・警備
- グローバル展開: 日本の高品質な警備サービスを海外に展開する動き
- 環境・災害対応: 気候変動に伴う災害対応や、再生可能エネルギー施設の警備
警備業界は、技術革新と人手不足という相反する要素を抱えながらも、社会インフラとして不可欠な存在であり続けます。未経験から参入し、新しい技術や知識を学び続けることで、長期的に安定したキャリアを築ける業界です。
業界の将来性について詳しくは、警備業界の動向と将来性|市場規模・人手不足・DX化をご覧ください。
未経験から警備職に転職するステップ
警備職への転職は、未経験者でも比較的スムーズに進めることができます。ここでは、具体的な転職ステップを順番に解説します。
Step1: 自己分析と警備職種の選択
警備職への転職を成功させるためには、まず自分に合った警備職種を選ぶことが重要です。警備業務には様々な種類があり、それぞれ求められる適性が異なります。
体力面の確認: 交通誘導警備は屋外での立ち仕事で体力的負担が大きく、施設警備は屋内での巡回が中心です。自分の体力や健康状態を客観的に評価し、無理なく続けられる職種を選びましょう。
勤務形態の希望整理: 24時間交代制、夜勤専従、日勤のみなど、勤務形態は職種や現場によって異なります。家族構成やライフスタイルに合わせて、希望する勤務形態を明確にしておくことが大切です。夜勤は収入が高い反面、生活リズムが不規則になるため、自分に合うかどうか慎重に検討しましょう。
将来のキャリアイメージ: 「まずは経験を積みたい」のか、「資格を取得してキャリアアップしたい」のか、「管理職を目指したい」のか、将来のキャリアイメージを持っておくと、企業選びや面接での志望動機にも役立ちます。
適性の確認: 警備職に向いている人の特徴として、責任感が強い、細かいことに気づける、ルーティンワークを着実にこなせる、緊急時に冷静に対応できる、などがあります。自分の性格や強みと照らし合わせて、適性を確認しましょう。
警備職に向いているかどうかの診断は、警備員に向いている人・向いていない人|適性診断をご覧ください。
Step2: 求人情報の収集と企業選び
警備職の求人は非常に多く、様々な媒体で見つけることができます。自分に合った企業を見つけるために、複数の方法で情報収集しましょう。
求人サイトの活用: Indeed、求人ボックス、マイナビ転職、リクナビNEXTなどの大手求人サイトでは、警備職の求人が常時掲載されています。勤務地、給与、勤務形態などの条件で絞り込み検索ができるため、効率的に求人を探せます。
ハローワーク: 地域の警備会社の求人はハローワークにも多数掲載されています。ハローワークの職員に相談すれば、企業の情報や応募のアドバイスももらえます。また、職業訓練や就職支援プログラムを利用できる場合もあります。
直接応募: 気になる警備会社のウェブサイトには、採用情報が掲載されていることが多いです。大手警備会社は特に、自社の採用ページで詳しい情報を公開しているため、企業研究にも役立ちます。
企業選びのポイント:
- 大手vs中小: 大手は給与・福利厚生が充実し、研修制度も整っていますが、配属先が選べないこともあります。中小は地域密着で融通が利きやすい反面、福利厚生は大手に劣る場合があります。
- 業務内容の確認: 施設警備中心、交通誘導中心など、企業によって得意分野が異なります。自分がやりたい業務を扱っている企業を選びましょう。
- 教育体制: 未経験者向けの研修制度が充実しているか、資格取得支援があるかを確認しましょう。
- 勤務地: 自宅から通いやすい営業所があるか、希望する地域での勤務が可能かを確認します。
警備会社の選び方については、警備会社の選び方|大手と中小・ホワイト企業の見分け方や大手警備会社ランキング|売上高・年収・評判を徹底比較も参考にしてください。
優良企業の見極め方
警備業界には多数の企業があり、労働条件や職場環境には大きな差があります。優良企業を見極めるためのポイントを押さえておきましょう。
労働条件の確認: 求人票に記載されている給与、勤務時間、休日、社会保険の有無を必ず確認します。特に、「試用期間中の給与」「夜勤手当の金額」「残業代の支払い方法」など、細かい条件も確認しておくと、入社後のギャップを防げます。
教育体制: 新任教育の内容、OJT(実地訓練)の期間、資格取得支援制度の有無を確認します。未経験者を丁寧に育てる体制が整っている企業は、離職率も低く、長く働ける環境が整っています。
離職率: 企業のウェブサイトや面接時に、離職率や平均勤続年数を確認できれば、職場の雰囲気や働きやすさを推測できます。離職率が極端に高い企業は、労働条件や職場環境に問題がある可能性があります。
口コミ情報の確認: 転職口コミサイト(OpenWork、転職会議など)で、実際に働いている人や退職した人の意見を参考にします。ただし、ネガティブな口コミばかりに惑わされず、複数の情報を総合的に判断することが大切です。
Step3: 応募書類の作成と面接対策
求人に応募する際には、履歴書・職務経歴書の作成と、面接対策が必要です。警備職は未経験者歓迎の求人が多いため、過度に緊張する必要はありませんが、基本的な準備は怠らないようにしましょう。
履歴書の書き方: 履歴書は手書きでもパソコン作成でも構いません。写真は清潔感のある服装で撮影し、誤字脱字がないよう丁寧に記入します。学歴・職歴は正直に記載し、空白期間がある場合は面接で説明できるよう準備しておきます。
職務経歴書の書き方: 異業種からの転職の場合、これまでの仕事で培った「責任感」「注意力」「コミュニケーション能力」など、警備職に活かせるスキルを強調します。具体的なエピソードを交えると説得力が増します。
自己PRの作り方: 警備職に向いている点(責任感、体力、真面目さ、人と接することが好きなど)を具体的に述べます。「社会の安全に貢献したい」「長く働ける仕事を探している」など、前向きな動機を示すことが重要です。
志望動機の作り方: 「なぜ警備職を選んだのか」「なぜこの会社を選んだのか」を明確に答えられるよう準備します。企業のウェブサイトを見て、企業理念や事業内容を理解しておくと、説得力のある志望動機が作れます。
面接でのポイント: 警備職の面接では、「欠格事由に該当しないか」「健康状態は問題ないか」「夜勤は可能か」「長く働く意思があるか」といった点が重視されます。正直に、はっきりと答えることが大切です。また、清潔感のある服装と、礼儀正しい態度を心がけましょう。
未経験者向けの詳しい志望動機の書き方や面接対策については、警備員の志望動機の書き方|未経験者向け例文とポイントや警備員の面接対策|よく聞かれる質問と回答例を完全網羅で詳しく解説しています。
Step4: 入社後の新任教育と実務開始
内定を得て入社が決まったら、実際に現場に出る前に新任教育を受けます。この教育は警備業法で義務付けられており、警備員として働くための基礎を学ぶ重要なステップです。
新任教育の流れ: 入社後、まず座学と実技を組み合わせた新任教育(15時間以上)を受けます。警備業法、警備員の心構え、基本動作、護身術、応急手当などを学びます。教育期間中も給与は支払われるため、安心して研修に集中できます。
OJT研修: 新任教育の後、先輩警備員と一緒に現場で実地研修(OJT)を行います。実際の現場で巡回の手順、来訪者対応、機器の操作方法などを学びます。OJT期間は企業によって異なりますが、通常は1週間〜1か月程度です。
配属先の決定: OJT終了後、正式な配属先が決まります。希望する勤務地や勤務形態を考慮して配属されますが、人員配置の都合で希望通りにならないこともあります。配属先が決まったら、そこでの勤務がスタートします。
初めての現場勤務: 最初は緊張するかもしれませんが、マニュアルや先輩のアドバイスに従って業務を進めれば、徐々に慣れていきます。分からないことがあれば、遠慮せず先輩や上司に質問することが大切です。
入社後の研修制度や実際の勤務の流れについては、未経験から警備員になる完全ガイド|採用条件・研修制度で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
警備職への転職を検討する際に、多くの人が抱く疑問や不安にお答えします。
警備職に関する基本的な質問
警備職に関する基本的な疑問について、よくある質問をまとめました。
Q1: 何歳まで働けますか?
警備員には法律上の定年はありませんが、企業によって60歳〜65歳の定年を設けている場合があります。ただし、警備業界は人手不足のため、定年後も嘱託社員やアルバイトとして70代まで働いている人も多数います。体力と健康状態が維持できれば、高齢でも活躍できる職業です。
Q2: 女性でも働けますか?
もちろん可能です。警備業界では女性警備員の需要が高まっており、特に商業施設や病院、女性専用施設などでは女性警備員が優遇されるケースもあります。女性の視点や細やかな対応が評価され、積極的に採用している企業も増えています。ただし、夜勤や体力的な負担がある現場もあるため、自分に合った職種を選ぶことが大切です。
Q3: 夜勤は必須ですか?
職種や勤務先によります。24時間体制の施設警備では夜勤が含まれることが多いですが、交通誘導警備は日勤中心の現場もあります。また、企業によっては「日勤のみ」「夜勤専従」など、勤務形態を選択できる場合もあります。面接時に希望を伝え、調整してもらうことも可能です。
給与・待遇に関する質問
給与や待遇に関する具体的な疑問について回答します。
Q4: 未経験の初任給はいくらですか?
未経験者の初任給は、月給18万円〜22万円程度が一般的です。ただし、夜勤手当や資格手当が加算されると、月収25万円程度になることもあります。また、地域や企業規模によって差があるため、求人票で詳細を確認することが重要です。
Q5: 賞与はありますか?
大手警備会社では年2回の賞与(ボーナス)を支給している企業が多いです。ただし、賞与の有無や金額は企業によって大きく異なり、中小企業では賞与がない場合もあります。求人票や面接時に確認しておきましょう。
転職・キャリアに関する質問
転職やキャリアに関する疑問について回答します。
Q6: 未経験でも本当に転職できますか?
はい、警備職は未経験者歓迎の求人が非常に多く、転職しやすい職業です。警備業界は深刻な人手不足のため、特別なスキルや経験がなくても、やる気と健康状態があれば採用される可能性が高いです。新任教育制度も整っているため、未経験からでも安心してスタートできます。
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この記事では、警備職の基礎知識から具体的な仕事内容、年収、資格、キャリアパス、転職ステップまで、すべての情報を網羅的に解説しました。警備職は、未経験からでも挑戦でき、年齢に関係なく長く働ける職業です。人手不足を背景に採用も活発で、資格取得やキャリアアップの道も開かれています。
警備職への転職を検討している方は、この記事で得た知識をもとに、自分に合った警備職種や企業を選び、新しいキャリアへの第一歩を踏み出してください。警備職は、社会の安全・安心を支える重要な仕事であり、やりがいと安定性を兼ね備えた職業です。
詳しい情報や具体的なステップについては、本文中でリンクした各記事も合わせてご覧ください。あなたの警備職への転職が成功することを願っています。
警備職の基礎知識
仕事内容と勤務形態
- 施設警備の仕事内容と年収|未経験からの始め方
- 交通誘導警備の仕事|道路工事現場の 1 日と資格
- 身辺警護(ボディガード)の仕事|高年収 4 号警備
- 警備員の 1 日のスケジュール|施設警備と交通誘導を比較
- 警備員の勤務形態を解説| 24 時間交代制・夜勤の実態
給与・待遇
資格・スキル
- 警備業務検定とは| 6 種類の資格と取得方法を完全解説
- 施設警備 2 級資格の取得方法|未経験から合格する対策
- 交通誘導警備 2 級の資格|実技試験の内容と合格のコツ
- 警備員指導教育責任者になるには|必須資格を徹底解説
- 警備業務管理者の資格と役割|営業所責任者の条件
転職ガイド
- 未経験から警備員になる完全ガイド|採用条件・研修制度
- 警備員の志望動機の書き方|未経験者向け例文とポイント
- 警備員の面接対策|よく聞かれる質問と回答例を完全網羅
- 警備会社の選び方|大手と中小・ホワイト企業の見分け方
- 大手警備会社ランキング|売上高・年収・評判を徹底比較
キャリアパス
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