警備業界の動向と将来性｜市場規模・人手不足・DX化

公開日: 2025年11月25日更新日: 2025年11月30日

著者: MeTimeキャリア編集部

警備業界は市場規模3.4兆円の巨大産業です。東京オリンピック、大阪万博といった大規模イベント、インフラの老朽化、犯罪対策強化といった背景から需要が拡大する一方で、有効求人倍率は約7倍と深刻な人手不足に直面しています。こうした課題に対応するため、警備ロボット、ドローン、AI、5G、IoTといった最新技術を活用したDX化が急速に進んでいます。本記事では、警備業界の市場動向、人手不足の実態、技術革新の詳細、そして転職先としての将来性と魅力を幅広く紹介します。

警備業界の市場規模と成長性

警備業界の市場規模は約3.4兆円に達しており、全国で約9,000社の警備会社が事業を展開しています。警備員数は約58万人で、建設業や運輸業に次ぐ規模の労働集約型産業です。セコムやALSOKといった大手警備会社の年間売上は数千億円に達し、警備業界は社会インフラとして不可欠な存在となっています。

警備業界の成長を支える要因は多岐にわたります。東京オリンピック、大阪万博などの大規模イベント開催に伴い、交通誘導や施設警備の需要が継続的に高まっています。また、高速道路や橋梁、トンネルといった社会インフラの老朽化に伴う点検・管理ニーズが拡大しており、工事現場での警備需要も増加しています。さらに、企業や商業施設、マンションでのセキュリティ意識の高まりにより、常駐警備や機械警備の導入が加速しています。景気変動に左右されない安定した需要が、警備業界の成長を支える大きな要因となっているのです。

セコムは売上高1兆円を超える総合セキュリティ企業に成長し、警備に加えて防災、医療、保険といった領域へも事業を拡大しています。ALSOKも売上高4,000億円規模の大手企業として、セキュリティシステムの開発・販売に注力しています。こうした大手企業は警備ロボットやAIシステムの導入を通じて、業界全体の成長を牽引し、DX化を推進している主要プレイヤーとして機能しています。

警備業界の人手不足の実態

警備業界の有効求人倍率は約7倍と全産業平均の約1.2倍を大きく上回っており、1人の求職者に対して複数の求人がある状況です。交通誘導警備や施設警備の現場では特に人員確保が困難で、大手企業でも計画した配置人員を満たせないケースが多いです。採用難の背景には、夜勤や土日勤務といった勤務形態、体力を要する業務、そして他業種との人材獲得競争があります。

警備員の高齢化も深刻な課題です。平均年齢は50歳を超え、60歳以上が全体の約40%を占めています。高齢者向けの職場として定年後の再就職先として人気がある一方で、体力が必要な業務や夜勤シフトでの身体的な負担が大きく、安全管理や健康対策が課題となっています。若手人材の確保と育成が業界の喫緊の課題であり、各社は採用戦略の見直しや労働環境の改善に急速に取り組んでいます。

一方で、人手不足は求職者にとって大きなチャンスでもあります。未経験者でも採用されやすく、資格取得支援制度や充実した研修プログラムを提供する企業が急速に増えています。給与水準の引き上げ、福利厚生の改善、正社員採用の拡大も進んでおり、昇進や昇格のチャンスが広がり、入社後のキャリアアップが期待しやすい環境が整っているのです。

警備業界のDX化と技術革新

警備業界ではDX化が急速に進んでいます。セコムの「セコムロボットX」やALSOKの「Reborg-X」といった自律走行型警備ロボットが商業施設やオフィスビル、空港などで導入され、24時間体制での巡回・監視を実現しています。カメラやセンサーを搭載したロボットは定型的な巡回業務を担当し、警備員はより高度な判断が必要な業務に集中できる環境を作り出しています。導入コストは高額ですが、人手不足の解消と警備品質の向上が期待されています。

ドローンの活用も広がりを見せています。工事現場やイベント会場、太陽光発電施設、インフラ施設での空中監視に活用され、人間がアクセスしにくい危険な場所の点検を安全に行えます。赤外線カメラを搭載すれば夜間監視も可能であり、遠隔地からのリアルタイム監視が実現します。自律飛行技術の向上により、今後のドローン警備の活用範囲はさらに拡大する見通しです。

AI技術は映像解析と異常検知を自動化し、警備員の負担を軽減しています。不審な行動パターンを検知し、顔認証システムと連携すれば、不審者の早期発見と追跡も可能です。5G技術の普及により、複数の監視カメラやセンサーからのデータを低遅延で統合管理できるようになり、高度で効率的な警備業務が実現しています。

IoT技術により、センサー、カメラ、警報装置、入退室管理システムといったあらゆる機器がネットワークで一元管理されます。異常発生時には複数システムが連携して自動対応し、スマートフォンやタブレットからの遠隔監視・操作も可能になります。人間とテクノロジーの協働による次世代警備体制が構築されつつあり、業界全体の効率化と高度化が急速に進んでいるのです。

警備業界の課題と対策

警備業界は成長を続ける一方で、労働環境、待遇、教育制度の改善に取り組んでいます。大手警備会社を中心に、勤務シフトの見直し、休憩時間の確保、労働時間管理が進められています。猛暑や厳寒での勤務に対し、空調服の支給、休憩所の設置、熱中症対策などが講じられ、働き方改革により残業削減と有給休暇取得促進が進んでいます。

人手不足を背景に待遇改善が加速しており、基本給の引き上げ、手当の充実、賞与増額といった待遇面の向上が急速に進んでいます。資格保有者には資格手当が支給され、スキルアップが直接的に収入アップに繋がる仕組みが整備されています。社会保険完備、退職金制度、福利厚生施設の充実など、長く働き続けられる環境づくりが着実に進み、正社員登用制度を設ける企業も増加傾向にあります。

教育制度も充実しており、警備業法で義務付けられた新任教育に加え、各社独自の研修プログラムやOJT制度が整備されています。警備員検定や施設警備業務検定などの資格取得費用を会社が負担する企業も多くあり、現場警備員から班長、隊長、管理職へのキャリアステップが可能な明確な道筋が示されています。

警備業界の将来性と転職市場

警備業界の需要は今後も安定して推移するでしょう。社会の安全・安心へのニーズは景気に左右されにくく、商業施設、オフィスビル、マンション、工事現場など、あらゆる場所で警備サービスが必要です。大阪万博、リニア中央新幹線開業、都市再開発プロジェクトといった大規模イベントやインフラ整備が今後も続き、警備需要は高水準を維持します。高齢化社会の進展により、見守りサービスや緊急対応といった新たなニーズも拡大しています。

警備業界では現場警備員からスタートし、班長、隊長、エリアマネージャーへと段階的に昇進できます。警備員指導教育責任者や機械警備業務管理者といった専門資格を取得することで、管理職や教育担当者としてのキャリアの構築も十分に可能です。大手企業では本社部門への異動や営業職、企画職への職種転換もあり、実に幅広いキャリア選択肢があります。経験とノウハウを活かして独立し、警備会社を設立する道も開かれています。

転職先として、未経験者でも採用されやすく、年齢制限が比較的緩やかで40代、50代からのスタートも十分に可能です。人手不足に伴う豊富な求人から、自分に合った勤務地や勤務形態を自由に選べる環境があります。充実した資格取得支援制度と研修制度により、働きながらスキルアップできる環境が整備されており、社会貢献性の高いやりがいのある仕事として評価されています。DX化の進展により、最新テクノロジーを身につけながら、時代に即したキャリアを築ける業界なのです。警備業界のキャリアパスについて詳しく知りたい場合は、「【関連記事】：警備員のキャリアパス完全ガイド｜一般警備員から管理職」をご覧ください。

業界動向に関するよくある質問

AIやロボットに仕事を奪われないか

AIやロボットは警備業務を効率化するためのツールです。定型的な巡回や監視業務はロボットが担当しますが、緊急時の判断、来訪者との対応、臨機応変な対応といった業務は人間にしかできません。AIやロボットと協働することで、警備員はより高度で価値の高い業務に集中できる環境が生まれます。今後求められるのはテクノロジーを活用できる高度な警備員であり、新しいスキルを身につけることでキャリアの幅が確実に広がります。

今から警備業界に入っても将来性はあるか

警備業界は安定した需要が見込まれ、将来性は十分にあります。大規模イベント、都市開発、インフラ整備といった需要が継続し、人手不足が解消される見通しもありません。今参入することで、業界の大きな変革期にキャリアを積むことができ、DX化対応スキルを早期に習得できるメリットがあります。資格取得や経験を重ねることで、管理職や専門職へのキャリアアップも十分に可能であり、長期的に安定した将来が見望めるのです。

DX化で必要なスキルは何か

DX化が進む警備業界で求められるのは、基本的なITリテラシーです。タブレットやスマートフォンを使った報告業務、監視システムの操作、データ入力といった基本的な作業ができれば十分です。特別な高度な専門知識は不要であり、入社後の充実した研修で必要な知識やスキルを習得できます。セキュリティシステムの基本的な知識、AIやロボットとの協働方法を理解することで、より高度で専門的な業務に携わることが可能になります。学習意欲と成長意欲があれば、警備員検定や施設警備業務検定といった資格取得を通じて、必要なスキルを段階的に身につけることができるのです。

まとめ:警備業界の将来性を見据えたキャリア選択

警備業界は市場規模3.4兆円の巨大産業であり、社会インフラとして不可欠な存在です。人手不足が続く中、待遇改善と労働環境の整備が進み、転職先としての魅力が確実に高まっています。警備ロボット、ドローン、AI、5G、IoTといった最新技術の導入により、業界は大きな変革期を迎えており、テクノロジーと協働する新しい警備の形が生まれています。未経験者でも挑戦しやすく、資格取得支援や充実した教育制度があるため、安心してキャリアをスタートできる環境が整っているのです。安定した需要、多様なキャリアパス、高い社会貢献性を総合的に考えると、警備業界は十分な将来性を持つ転職先として検討する価値があります。DX化の波に乗り、新しいスキルを身につけながら、長期的で安定したキャリアを築ける業界となっているのです。