交通誘導警備の仕事|道路工事現場の1日と資格

交通誘導警備は、道路工事や建設現場で車両や歩行者を安全に誘導する重要な仕事です。警備業法で定められた「2号警備」に分類され、屋外での業務が中心となります。未経験からでも始めやすく、新任教育を受ければすぐに現場で働けるため、転職先として注目されています。平均年収は約348万円で、日給10,000円~12,000円程度、時給1,200円~1,400円が相場です。
警備業界の中でも交通誘導警備は、肉体的な負担が大きい分、継続的な需要があり、安定した仕事として多くの人に選ばれています。この記事では、交通誘導警備の具体的な仕事内容から1日のスケジュール、夏の暑さ対策と冬の寒さ対策、必要な資格、給与体系、未経験者の就職方法まで、実際に働く前に知りたい情報を詳しく解説します。
交通誘導警備(2号警備)とは
交通誘導警備は、警備業法で定められた「2号警備(交通誘導警備業務)」に該当する警備業務です。道路工事や建設工事の現場で、一般車両や歩行者の安全を確保しながら、工事がスムーズに進むよう交通を誘導します。
なお、警備職には複数の業務区分があります。詳しくは「警備員の仕事内容完全ガイド|4つの業務区分と職場環境」をご参照ください。
警備業法では警備業務を1号から4号まで分類しており、2号警備は「人もしくは車両の雑踏する場所またはこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」と定義されています。つまり、工事現場や交通規制が必要な場所で、事故を未然に防ぐための警備が主な役割です。施設内で警備する1号警備とは異なり、屋外での実務的な安全管理が求められます。
2号警備の特徴
2号警備の最大の特徴は、屋外での勤務が中心となることです。道路や建設現場といった野外環境で、天候の影響を直接受けながら働きます。夏場は炎天下での立ち仕事となり、熱中症対策が欠かせません。冬場は寒風の中で長時間立ち続けるため、防寒対策が重要です。
仕事内容としては、体を動かす場面が多く、基本的な体力が求められます。ただし、特別な運動能力や筋力は不要です。日常生活を普通に送れる体力があれば、20代から60代まで幅広い年代が活躍できる職種です。実際に、年配の方も多く働いており、経験や落ち着きが評価される現場も少なくありません。
主な勤務現場
交通誘導警備の勤務現場は多岐にわたります。最も一般的なのは道路工事現場で、片側交互通行や車線規制を行う際の車両誘導を担当します。大規模な建設現場では、工事車両の出入り管理や周辺歩行者の安全確保が主な業務となります。
その他、大規模なイベントでは来場者の車両を誘導して駐車場へ案内したり、歩行者の動線を整理したりします。商業施設の駐車場では、混雑時の入出庫誘導や満空情報の案内を行うことも多いです。現場によって業務内容は異なりますが、基本的な誘導技術は全ての現場で共通しており、一度身につけるとどの現場でも応用できます。
交通誘導警備の具体的な仕事内容
交通誘導警備の仕事は、大きく分けて「車両誘導」「歩行者誘導」「交通規制の補助」の3つです。各業務はチーム全体の安全性に影響するため、高い集中力と責任感が必要とされます。警備職に向いているかどうか不安な場合は、「警備員に向いている人・向いていない人|適性診断」で自分の適性を確認してみてください。
車両誘導業務
車両誘導は、交通誘導警備の最も中心的な業務です。道路工事で片側交互通行になっている場合、誘導灯(赤色・緑色の発光する棒)を使って車両を安全に誘導します。緑色の誘導灯は「進んでください」、赤色の誘導灯は「停止してください」という意味で、対向車線の車両と交互に通行させます。
手信号も同様に重要な技術です。腕を大きく振って車両を停止させたり、手のひらを上に向けて徐行を促したりします。夜間や視界の悪い時には、より大きく明確な動作で合図を出す必要があります。また、工事現場への大型車両の出入り誘導では、運転手に死角を補う情報を伝え、安全に車両を誘導することが求められます。これはダンプカーやクレーン車など、重量のある車両の操作が伴うため、細心の注意が必要です。
歩行者誘導と安全確保
歩行者の安全確保も交通誘導警備の重要な役割です。工事現場の周辺では、通常の歩道が使えなくなることがあり、歩行者に迂回路を案内します。特に高齢者や子ども、ベビーカーを押している方には、わかりやすく丁寧に案内することが大切です。
危険箇所では声かけを行い、注意を促します。「足元にご注意ください」「この先工事中ですので、右側をお通りください」など、具体的で親切な指示を出します。雨天時は路面が滑りやすくなるため、より慎重な誘導が必要です。歩行者の安全を第一に考え、工事の進行よりも安全を優先する判断力が求められることが、この仕事の難しさでもあり、やりがいでもあります。
交通規制の補助
交通規制の準備と撤収も交通誘導警備員の重要な仕事です。朝の現場配置時には、カラーコーン(三角コーン)や規制看板を設置し、工事区域を明確にします。コーンは等間隔で並べ、車両が進入できないようにします。
規制看板には「工事中」「片側交互通行」「速度落とせ」などがあり、ドライバーに工事情報を事前に知らせます。これらの設置作業は、工事開始前に完了させる必要があります。夕方の撤収時には、すべての資材を回収し、道路を元の状態に戻します。片付け漏れは交通事故につながるため、複数人でダブルチェックを行い、最後まで気を抜けません。
交通誘導警備員の1日のスケジュール
交通誘導警備員の1日は早朝から始まり、夕方まで続きます。以下は、道路工事現場での典型的な1日の流れです。毎日同じパターンで仕事が進むため、比較的規則正しい生活を送ることができます。他の警備職との勤務形態の違いについて詳しく知りたい方は、「警備員の1日のスケジュール|施設警備と交通誘導を比較」もあわせてご参照ください。
朝の準備と現場配置(7:00-9:00)
午前7時に警備会社の営業所に集合します。制服に着替えて、誘導灯、ホイッスル、トランシーバーなど、必要な装備を確認します。夏場は熱中症対策のため、水筒や塩分タブレットを準備し、冬場は防寒着やカイロを用意します。
警備会社の車両で現場へ移動します。到着後、現場責任者と朝礼を行い、その日の工事内容、配置位置、危険予測を共有します。朝礼では安全に関する指示が厳しく確認される傾向があり、警備員全員がリスク意識を高めることが期待されます。その後、カラーコーンや規制看板を設置し、配置位置に就きます。工事開始は通常8時30分から9時頃で、それまでに準備を完了させます。
日中の誘導業務(9:00-17:00)
日中は、配置された位置で交通誘導業務を行います。片側交互通行の場合、対向にいる警備員とトランシーバーで連絡を取り合い、車両を誘導します。「こちら送ります」「了解、受けます」といった簡潔な通信で、スムーズな交通の流れを作ります。
昼休憩は12時から13時の間で、交代制で取ります。現場を離れることはできないため、現場近くの休憩スペースや警備会社の車内で昼食を取ります。午後も同様に誘導業務を続けますが、夏場は2時間おきに水分補給の時間を取り、冬場は体を動かして体温を維持します。立ちっぱなしが続くため、足の疲労をこまめにほぐすことも大切です。信号待ちの時間を利用して、足首を回したり、ふくらはぎをストレッチしたりする警備員も多いです。
撤収作業と帰社(17:00-18:00)
午後5時頃、工事が終了すると撤収作業に入ります。カラーコーンや規制看板を回収し、道路に工事の痕跡が残らないよう清掃します。撤収漏れがないか、複数人で確認し合うことが鉄則です。
営業所に戻ったら、装備を返却し、日報を作成します。日報には、勤務時間、現場の状況、特記事項(ヒヤリハットや危険箇所など)を記入します。すべての業務が終わるのは午後6時頃です。残業がある場合は、夜間工事の現場に配置されることもあり、その場合は深夜手当が支給されます。
交通誘導警備の年収と給与
交通誘導警備の給与体系は、主に日給制または時給制です。どちらの方式を選ぶかは、個人の生活スタイルや就職先の警備会社によって異なります。警備職全体の年収傾向について詳しく知りたい方は、「警備員の年収を徹底分析|平均給与・業務別・年齢別」もご参照ください。
平均年収と日給
交通誘導警備員の平均年収は約348万円です。月収に換算すると28万円から30万円程度で、日給制で働く場合が多くなります。1日あたりの日給相場は10,000円から12,000円で、経験を積むと13,000円以上になることもあります。
フルタイムで月に22日勤務した場合、日給11,000円×22日=242,000円となり、これに残業手当や休日出勤手当が加わります。年収は勤務日数によって変動するため、安定して働ける会社選びが重要です。特に繁忙期(春から秋)は工事案件が多く、短期集中で稼ぎたい方にとって最適な職種と言えます。
時給と各種手当
時給制の場合、1,200円から1,400円が一般的です。8時間勤務で日給9,600円から11,200円となり、日給制より少し安い傾向があります。残業が発生した場合は、時給の25%増の割増賃金が支払われるため、例えば時給1,300円の場合、残業時は1,625円になります。
資格手当も重要な収入源です。交通誘導警備業務検定2級を取得すると、月額5,000円から10,000円の資格手当が支給されます。さらに、夜間勤務手当(深夜割増25%)や休日出勤手当(35%増)などもあります。こうした各種手当を活用して働けば、年収400万円以上を目指すことも十分可能な職種です。高い年収を目指す方は、「警備員で年収1000万円は可能?|高収入を実現する方法」も参考にしてみてください。
交通誘導警備の体力的負担と対策
交通誘導警備は屋外での立ち仕事が中心のため、体力的な負担があります。特に夏の暑さと冬の寒さは厳しく、適切な対策が長く働き続けるための必須条件です。季節ごとの対策を理解していれば、体力的な不安を大きく軽減できます。
夏の暑さ対策
夏場の交通誘導警備は、熱中症との戦いです。炎天下でのアスファルトの照り返しは想像以上に厳しく、体感温度は40度を超えることもあります。水分補給は30分に1回のペースで行い、1日に2リットル以上の水分を摂取することが推奨されています。
塩分補給も欠かせません。塩分タブレットや経口補水液を携帯し、発汗で失われた塩分を補います。休憩時は日陰に入り、冷却タオルや首に巻く冷却グッズで体温を下げます。良心的な警備会社では、移動式のテントを設置したり、2時間ごとに休憩を取るシフトを組んだりしています。体調に異変を感じたら、すぐに現場責任者に申し出ることが重要です。無理して続けると、後々の健康問題につながります。
冬の寒さ対策
冬場は寒風にさらされながらの立ち仕事となり、体が芯から冷えます。防寒対策の基本は重ね着です。インナーには発熱素材の肌着を着用し、中間層にフリースやセーター、外側に防風・防水のジャケットを着ます。手袋や耳当て付きの帽子も必須です。
カイロは背中、腰、足先に貼ると効果的ですが、同じ場所に長時間貼り続けると低温やけどのリスクがあるため注意が必要です。体を動かして血行を良くすることも大切で、その場で足踏みをしたり、腕を回したり、膝を曲げたりして体温を維持します。温かい飲み物を魔法瓶に入れて持参すると、休憩時に体を温められます。
長く続けるための体力管理
交通誘導警備を長く続けるには、日頃の体力管理が重要です。ウォーキングやストレッチなど、適度な運動習慣を身につけると、仕事での疲労が軽減されます。特に足腰の筋力を維持することで、立ち仕事の負担が大きく減ります。
睡眠も重要な要素です。1日7時間以上の睡眠を確保し、疲労を翌日に持ち越さないようにします。栄養バランスの取れた食事も大切で、特にタンパク質とビタミンを意識して摂取することをお勧めします。休日は体を休め、趣味やリラックスできる時間を作ることで、心身のリフレッシュが実現できます。
交通誘導警備に必要な資格
交通誘導警備として働くには、法律で定められた教育を受ける必要があります。さらにキャリアアップを目指すなら、国家資格の取得も視野に入れることが重要です。警備職に必要な資格全般については、「警備業務検定とは|6種類の資格と取得方法を完全解説」でも詳しく解説しています。
必須の新任教育
警備業法により、すべての警備員は配置前に「新任教育」を受けることが法律で義務付けられています。新任教育は合計30時間以上で、「基本教育」と「業務別教育」に分かれています。
基本教育では、警備業法の知識、警備員の心構え、護身術、救急法などを学びます。業務別教育では、交通誘導の実技訓練を行い、誘導灯の使い方、手信号の方法、片側交互通行の誘導手順など、実際の現場で必要なスキルを習得します。教育を修了すると、修了証が発行され、その後現場に配置されます。多くの会社では、研修期間中も日給が支払われるため、経済的な負担は少なくて済みます。
交通誘導警備業務検定2級
キャリアアップを目指すなら、「交通誘導警備業務検定2級」の取得を目指しましょう。これは国家資格で、公安委員会が実施する試験に合格する必要があります。学科試験と実技試験があり、交通誘導に関する専門知識と高度な技術が求められます。
2級資格を取得すると、資格手当が支給され、月収が5,000円から10,000円アップします。また、現場の指導員や責任者への昇格も可能になり、キャリアの道が大きく広がります。受験資格は、警備員として1年以上の実務経験があることです。試験は年に1~2回実施され、合格率は約50%程度です。会社によっては、受験対策講習を実施しているところもあるため、事前に確認することをお勧めします。詳細は「交通誘導警備2級の資格|実技試験の内容と合格のコツ」をご参照ください。
未経験から交通誘導警備を始める方法
交通誘導警備は未経験者でも始めやすい仕事です。適切な求人選びと面接準備を行えば、転職のハードルは低くなります。以下は、求人の探し方から現場デビューまでの流れです。
求人の探し方と応募
交通誘導警備の求人は、求人サイト(Indeed、タウンワーク、バイトルなど)で「交通誘導」「2号警備」「警備員」といったキーワードで検索すると見つかります。警備会社の公式サイトでも採用情報が掲載されており、定期的にチェックすることをお勧めします。
面接では、志望動機、勤務可能日数、体力面での不安の有無などが質問されます。未経験でも採用されやすい職種なので、前向きな姿勢と健康面での問題がなければ、ほとんどの場合採用されます。年齢制限も比較的緩やかで、18歳から60代まで幅広い年齢層が活躍しています。面接時には、清潔感のある服装を選び、態度や言葉遣いが丁寧であることに心がけてください。
教育研修から現場デビュー
採用が決まると、まず新任教育30時間を受講します。座学と実技訓練を通じて、交通誘導の基本を学びます。その後、先輩警備員に同行して現場で実地訓練を行い、2~3回の同行を経て独り立ちとなります。
最初のうちは緊張しますが、先輩や現場責任者がサポートしてくれるため、わからないことはすぐに質問できます。危険だと感じたら無理をせず報告することが大切です。1ヶ月もすれば業務に慣れ、3ヶ月経つ頃には自信を持って働けるようになります。未経験から警備員になる方法についてより詳しく知りたい場合は、「未経験から警備員になる完全ガイド|採用条件・研修制度」をご参照ください。
まとめ: 交通誘導警備で安定した警備キャリアを築く
交通誘導警備(2号警備)は、道路工事や建設現場で車両や歩行者を安全に誘導する仕事です。平均年収は約348万円、日給10,000円~12,000円が相場で、未経験からでも始めやすい職種として多くの人に選ばれています。新任教育30時間を受ければ、すぐに現場で働くことができます。
体力的な負担を理由に避ける人も多いですが、適切な水分補給や防寒対策を行えば、長く続けられるのがこの職種の利点です。交通誘導警備業務検定2級を取得すれば、資格手当で月収がアップし、指導員や責任者へのキャリアアップも可能になります。
以下は、この記事で紹介した交通誘導警備の重要なポイントです:
- 交通誘導警備(2号警備)は屋外での立ち仕事が中心で、車両誘導と歩行者誘導が主な業務
- 平均年収348万円で、日給制と時給制の両方の働き方が可能
- 季節ごとの対策を理解することで、体力的な不安を軽減できる
- 新任教育30時間は法律で義務付けられており、会社によっては給与をもらいながら研修を受けられる
- 交通誘導警備業務検定2級の資格取得でキャリアアップが期待できる
- 未経験でも採用されやすく、年齢制限も比較的緩い職種
- 求人サイトや警備会社の公式サイトで常に求人が掲載されている
未経験から警備業界に転職したい方、安定した収入を得たい方、体を動かす仕事が好きな方には、交通誘導警備が最適な選択肢です。求人サイトや警備会社の公式サイトで求人を探し、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
警備職の基礎知識
仕事内容と勤務形態
- 施設警備の仕事内容と年収|未経験からの始め方
- 交通誘導警備の仕事|道路工事現場の 1 日と資格
- 身辺警護(ボディガード)の仕事|高年収 4 号警備
- 警備員の 1 日のスケジュール|施設警備と交通誘導を比較
- 警備員の勤務形態を解説| 24 時間交代制・夜勤の実態
給与・待遇
資格・スキル
- 警備業務検定とは| 6 種類の資格と取得方法を完全解説
- 施設警備 2 級資格の取得方法|未経験から合格する対策
- 交通誘導警備 2 級の資格|実技試験の内容と合格のコツ
- 警備員指導教育責任者になるには|必須資格を徹底解説
- 警備業務管理者の資格と役割|営業所責任者の条件
転職ガイド
- 未経験から警備員になる完全ガイド|採用条件・研修制度
- 警備員の志望動機の書き方|未経験者向け例文とポイント
- 警備員の面接対策|よく聞かれる質問と回答例を完全網羅
- 警備会社の選び方|大手と中小・ホワイト企業の見分け方
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