警備員の年収を徹底分析|平均給与・業務別・年齢別

警備員への転職を検討する際、実際の年収は大きな判断材料です。警備業界は業務内容や経験年数、地域によって給与体系が異なるため、平均値だけでは実態が見えません。
本記事では、警備員の平均年収363-376万円の詳細をはじめ、施設警備335万円、交通誘導348万円、身辺警護420-550万円といった業務別の比較、年齢や経験年数による収入推移、年収アップの方法まで、具体的なデータをもとに解説します。
警備員の平均年収と月給
平均年収363-376万円の詳細
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、警備員の平均年収は363万円から376万円です。この数字は正社員の年収で、ボーナスや各種手当を含んでいます。月給換算で27万円から31万円、年2回のボーナス(各1〜2ヶ月分)を含めた計算です。
ただし、平均値には施設警備(比較的給与が低い)から身辺警護(高給与の専門業務)まで含まれているため、実際の年収は業務内容で大きく変動します。年収中央値は約350万円と、日本平均年収(約430万円)より低い水準ですが、夜勤手当や資格手当を活用することで平均以上の収入を得ている警備員も多くいます。
月給と手取り額
警備員の月給27万円から31万円は額面です。実際の手取り額は社会保険料や税金が差し引かれるため、月給の約80%程度が目安となります。月給27万円なら手取り約22万円、月給31万円なら手取り約25万円です。
夜勤手当や資格手当が加算されると、月給は3万円から5万円程度上乗せされます。特に24時間勤務の施設警備や複数の資格を持つ警備員は、月5万円以上の手当を受け取るケースが珍しくありません。深夜時間帯(22時〜5時)の勤務は労働基準法により25%以上の割増賃金が義務付けられているため、夜勤が多いほど実質月収は高くなります。
業務別の年収比較
警備業務は4つに分類されます:1号警備(施設警備)、2号警備(交通誘導・雑踏警備)、3号警備(運搬警備)、4号警備(身辺警護)。代表的な3つの業務について比較します。
施設警備(1号警備)の年収
施設警備は警備業界で最も求人が多く、未経験者向けの業務です。平均年収335万円、月給27万円から28万円程度です。
特徴は24時間勤務のシフト制で、「24時間勤務→休み」を繰り返す形態が一般的。1回の勤務で日給18,000円から22,000円を受け取ります。夜勤手当や深夜割増を含め、月10〜12日の勤務で月給27万円前後を確保できます。
大手警備会社は年2回の賞与(各1ヶ月分)を支給し、年収320万円から360万円。中小企業では賞与がない場合もあり、年収300万円前後となることもあります。勤務先の選択が年収に直結する業務です。
交通誘導警備(2号警備)の年収
工事現場や道路工事で車両・歩行者を誘導する業務で、平均年収348万円と施設警備より高めです。日給10,000円から12,000円が相場で、月22日勤務なら月給22万円から26万円程度です。
給与が高い理由は屋外作業で天候に左右され、体力的負担が大きいためです。夏の炎天下や冬の寒冷地での勤務は過酷で、その分基本給が高く設定されています。
ただし不安定な側面があります。雨天時は工事中止で勤務がなくなるため、月によって収入にばらつきが生じます。繁忙期(春〜秋)は月収30万円超も可能ですが、冬の閑散期は月収20万円以下になることもあります。
身辺警護(4号警備)の年収
最も専門性が高く、年収420万円から550万円と高水準です。月給35万円から45万円で、施設警備の1.5倍以上の収入が得られます。
給与が高い理由は高度な訓練と資格が必須で、危険を伴う業務だからです。要人の身辺を守るには護身術・緊急対応スキル・法律知識が必要で、警備業務検定や身辺警護専門資格が必須となります。
経験豊富な警備員は年収600万円超も可能で、警護手当や危険手当、深夜手当が加算されさらに高くなります。ただし求人は非常に限られており、施設警備や交通誘導警備で実績を積んでから転向するのが一般的なキャリアパスです。「【関連記事】:身辺警護(ボディガード)の仕事|高年収4号警備」も参考になります。
年齢別の年収推移
年功序列が徹底された一般企業と異なり、警備業界では経験年数や資格取得、役職昇進が年収を大きく左右します。
20代-30代の年収
20代の平均年収は300万円から350万円です。未経験からのスタートが多く、20代前半は研修期間中の給与で年収280万円から320万円程度です。
30代で実務経験が積み重なると、平均年収は350万円から400万円に上昇します。この時期に警備業務検定2級や1級を取得すると、資格手当が月5,000円から10,000円加算され、年収で6万円から12万円増えます。
30代は体力が充実した年代で、夜勤や24時間勤務をこなせるため、基本給に加えて月3万円から5万円の上乗せが可能。年収400万円超の警備員も少なくありません。この時期の資格取得と経験が、40代以降の年収を大きく左右します。
40代-50代の年収
40代は平均年収380万円から450万円に上昇し、隊長や班長といった管理職に昇進する警備員が増えます。役職手当が月3万円から5万円加算されます。
50代は平均年収400万円から500万円とさらに上昇。長年の経験で現場責任者を任されることが多く、後輩指導やマネジメント業務が増えます。大手警備会社では年収550万円から600万円を得るベテラン警備員も珍しくありません。
ただし40代以降は体力的に夜勤や24時間勤務が難しくなる警備員も出てきます。日勤中心に切り替えると夜勤手当が減り年収が下がることもあります。体力と収入のバランスを考えながらキャリアアップを目指すことが重要です。
60代以降の年収
60代以降の平均年収は350万円から400万円です。再雇用制度や嘱託社員として働き続ける警備員が多く、年金と給与を両立させています。
60代は体力的負担の少ない施設警備の日勤や受付業務を兼ねた警備に従事するのが一般的。給与は現役時代より低い月給20万円から25万円程度ですが、年金と合わせれば年収500万円前後を確保できます。
警備業界は人手不足が続いており、60代以降でも積極採用する企業が多いのが特徴です。70代で現役に働く警備員も珍しくなく、年齢を重ねても働き続けられる環境は業界の大きな魅力です。
経験年数別の年収モデル
未経験から入社した警備員の具体的な収入モデルとキャリアパスを紹介します。
1年目-3年目
1年目の平均年収は280万円から320万円です。入社後は新任教育(約30時間)を受け、警備業法で定められた基礎知識と実技を学びます。研修中は最低賃金に近い水準です。
研修修了後は現場配属で先輩の指導を受けながら実務をこなします。施設警備なら月給22万円から25万円、交通誘導警備なら日給9,000円から10,000円が相場。手当を含めれば年収300万円前後を確保できます。
3年目は実務経験が認められ、年収は320万円から360万円に上昇。この時期に警備業務検定2級を取得すると、資格手当が月5,000円加算され年収で6万円増えます。多くの警備会社は3年目までに2級取得を推奨しており、資格取得で昇給チャンスが広がります。
5年目-10年目
5年目は平均年収360万円から420万円に上昇。複数の現場を経験して独り立ちしている警備員がほとんどです。警備業務検定1級を取得すると、資格手当が月10,000円から15,000円に増え、年収で12万円から18万円のプラスになります。
5年目以降は現場リーダーを任されることが増え、リーダー手当(月5,000円から10,000円)が加算。後輩指導や現場管理の経験が、次のステップである管理職への道を開きます。
10年目は平均年収400万円から500万円。警備業務検定1級を複数取得し専門性を高めている警備員が多くなります。大手警備会社では隊長補佐や班長に昇進し、年収450万円から500万円を得るケースが一般的です。
10年目以降・管理職
10年以上の経験者は平均年収450万円から600万円です。隊長や班長といった管理職に就く警備員が増え、役職手当が月3万円から5万円加算されます。
管理職はシフト管理、新人教育、クライアント対応といったマネジメント業務が中心となります。責任は重くなりますが給与も大幅に上昇し、大手警備会社の管理職なら年収550万円から600万円も珍しくありません。
さらに警備業界で15年以上の経験を持ち複数の1級資格を取得したベテラン警備員の中には、年収700万円超の人もいます。本部での教育担当や営業担当としての道も開け、現場を離れてデスクワーク中心のキャリアを選ぶことも可能。経験を積むほどキャリアの選択肢が広がるのが警備業界の特徴です。
警備員の給与体系と手当
手当を上手に活用することで年収を大きく増やせます。
基本給と夜勤手当
警備員の基本給は月給制と日給制に分かれます。施設警備の正社員は月給制で基本給18万円から22万円程度。交通誘導警備はシフト制の日給制で日給8,000円から10,000円が相場です。
夜勤手当は給与を大きく左右する重要な要素です。労働基準法では深夜時間帯(22時〜5時)の勤務に対して25%以上の割増賃金が義務付けられています。時給1,200円なら深夜帯は時給1,500円に上昇します。
24時間勤務の施設警備では日給18,000円から22,000円で、このうち夜勤手当が4,000円から6,000円を占めています。月10回の24時間勤務で夜勤手当だけで月4万円から6万円加算され、年収で48万円から72万円のプラスになります。夜勤を積極的にこなす警備員ほど高い年収を実現できるのが業界の特徴です。
資格手当と役職手当
資格手当は警備業務検定の級で異なります。2級取得で月5,000円から10,000円、1級取得で月10,000円から20,000円が支給されます。複数資格を持つ場合はそれぞれに加算されるため、2つの1級資格なら月20,000円から40,000円の資格手当が得られます。
役職手当はリーダー・班長・隊長に応じて支給されます。リーダー手当は月5,000円から10,000円、班長手当は月20,000円から30,000円、隊長手当は月30,000円から50,000円が相場。大手警備会社の隊長クラスは基本給に加えて月5万円の役職手当が支給され、年収で60万円の差が生まれます。
資格と役職を両立させれば、基本給に加えて月5万円から8万円の手当が可能で、年収で60万円から96万円のプラスになり、基本給のみの警備員と大きな差が生まれます。「【関連記事】:警備業務検定とは|6種類の資格と取得方法を完全解説」で資格取得方法を詳しく説明しています。
その他の手当
交通費は全額支給が一般的で、公共交通機関利用者には定期代が、自家用車通勤者にはガソリン代が支給されます。
残業手当は通常の時給に25%を上乗せした金額が支給。交通誘導警備では工事延長で残業が多く、月10時間から20時間の残業で月2万円から4万円の残業手当が得られます。
特別勤務手当は年末年始やゴールデンウィークなどの繁忙期に支給されます。警備需要が高まるため通常の日給に加えて3,000円から5,000円が上乗せ。年末年始の5日間勤務で15,000円から25,000円の特別手当を得られます。
地域別の年収差
最低賃金が高い都市部と低い地方では、同じ業務でも給与水準に大きな差が出ます。
都市部の年収
東京や大阪などの大都市圏で働く警備員の平均年収は400万円から450万円です。東京都の最低賃金は1,113円(2024年時点)と全国最高で、警備員の時給も1,300円から1,500円と高めに設定されています。
施設警備の24時間勤務は、都市部で日給20,000円から25,000円。月10回勤務で月給20万円から25万円を確保できます。夜勤手当や資格手当を加えれば月給30万円から35万円も珍しくありません。
都市部は警備需要が高く、オフィスビル・商業施設・イベント会場など多様な現場があり、安定した収入が得やすいのが特徴です。ただし生活費も高いため、実質的な生活水準は地方と大きな差がないこともあります。
地方の年収
地方で働く警備員の平均年収は320万円から360万円です。地方の最低賃金は900円から1,000円程度で、警備員の時給も1,000円から1,200円と都市部より低めです。
施設警備の24時間勤務は地方で日給16,000円から20,000円。月10回勤務で月給16万円から20万円程度です。手当を含めても月給25万円から28万円が上限となることが多く、都市部と年収で50万円から100万円の差が生まれます。
ただし地方は家賃や食費が安いため、手取り額が少なくても生活できます。警備会社の人手不足も深刻で採用されやすく、長期的に安定して働ける環境が整っています。都市部の高い年収と地方の低い生活費どちらを選ぶかは、個人のライフスタイルで判断できます。
警備員の年収を上げる方法
資格取得で収入アップ
警備業務検定の資格取得は最も確実な年収アップ方法です。2級取得で月5,000円から10,000円、年収で6万円から12万円のプラスになります。
1級取得で月10,000円から20,000円に上昇。複数資格を持つ場合はそれぞれに加算されるため、2つの1級資格なら月20,000円から40,000円、年収で24万円から48万円のプラスが可能です。
警備業務検定には施設警備、交通誘導警備、貴重品運搬警備、身辺警護など複数の種類があります。自分が従事する業務に応じた資格取得が推奨されます。多くの警備会社は資格取得研修や受験費用の補助制度を設けているため、積極的に活用しましょう。「【関連記事】:施設警備2級資格の取得方法|未経験から合格する対策」で詳しく解説しています。
キャリアアップで収入アップ
管理職昇進は年収を大きく上げる方法です。隊長や班長昇進で役職手当が月3万円から5万円加算され、年収で36万円から60万円のプラスになります。管理職になるには実務経験5年以上と警備業務検定1級の取得が条件となることが多いため、計画的にキャリアを築くことが重要です。
身辺警護への転向も高収入を実現する方法です。平均年収420万円から550万円と、施設警備や交通誘導警備より100万円以上高く設定されています。施設警備で実績を積み、検定資格を取得し、専門的な訓練を受ける必要がありますが、その分高い年収が得られます。
警備業界で10年以上経験を積んだ後、独立して警備会社を設立する道もあります。警備業開業には一定要件がありますが、成功すれば年収1000万円超も可能です。独立は最もリスクが高い選択肢ですが、その分リターンも大きいキャリアパスです。「【関連記事】:警備員のキャリアパス完全ガイド|一般警備員から管理職」でキャリアパスの詳細を参照できます。
まとめ: 警備員の年収を理解してキャリアを築こう
警備員の平均年収は363万円から376万円ですが、業務内容・経験年数・資格・地域で大きく変わります。施設警備335万円、交通誘導警備348万円、身辺警護420-550万円と、業務別年収差は最大200万円以上になります。
年齢別では、20代300-350万円、30代350-400万円、40代380-450万円、50代400-500万円と経験を積むことで着実に上昇します。60代以降も再雇用や嘱託社員として働き続け、年金と合わせて安定した収入を確保できます。
年収を上げるには警備業務検定資格取得、管理職昇進、専門業務への転向が効果的です。資格手当で年間24-48万円、役職手当で年間36-60万円のプラスが可能で、計画的にキャリアを築けば年収500万円超も十分に目指せます。
警備業界は人手不足が続き未経験でも始めやすく、長く働き続けられる環境が整っています。この記事で紹介した年収データとキャリアパスを参考に、自分に合った働き方を選んで充実した警備員キャリアを築いていきましょう。
警備職の基礎知識
仕事内容と勤務形態
- 施設警備の仕事内容と年収|未経験からの始め方
- 交通誘導警備の仕事|道路工事現場の 1 日と資格
- 身辺警護(ボディガード)の仕事|高年収 4 号警備
- 警備員の 1 日のスケジュール|施設警備と交通誘導を比較
- 警備員の勤務形態を解説| 24 時間交代制・夜勤の実態
給与・待遇
資格・スキル
- 警備業務検定とは| 6 種類の資格と取得方法を完全解説
- 施設警備 2 級資格の取得方法|未経験から合格する対策
- 交通誘導警備 2 級の資格|実技試験の内容と合格のコツ
- 警備員指導教育責任者になるには|必須資格を徹底解説
- 警備業務管理者の資格と役割|営業所責任者の条件
転職ガイド
- 未経験から警備員になる完全ガイド|採用条件・研修制度
- 警備員の志望動機の書き方|未経験者向け例文とポイント
- 警備員の面接対策|よく聞かれる質問と回答例を完全網羅
- 警備会社の選び方|大手と中小・ホワイト企業の見分け方
- 大手警備会社ランキング|売上高・年収・評判を徹底比較
キャリアパス
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