SaaS営業とIT営業の仕事内容を徹底解説|成長市場で働く魅力と必要スキル

「SaaS営業」や「IT営業」という言葉を聞いても、具体的にどんな仕事をするのかイメージできない方も多いのではないでしょうか。実は、これらの営業職は従来の営業とは大きく異なる仕事内容と魅力を持っています。本記事では、SaaS営業とIT営業の違いから、インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスといった分業体制、必要なスキル、成長市場で働く魅力まで、未経験者や転職検討者に向けて徹底解説します。営業職全般の基礎知識については「【関連記事】:営業の仕事内容を徹底解説|1日の流れから業務の種類まで未経験者向けガイド」で詳しく解説していますので、あわせてご参考ください。これからのキャリアを考える上で、参考にしてください。
SaaS営業とIT営業の違いとは
SaaS営業とIT営業は、どちらもテクノロジー関連のサービスや製品を扱う営業職ですが、ビジネスモデルや商材の性質が大きく異なります。SaaS営業は主にサブスクリプション型のクラウドサービスを販売し、継続的な顧客関係を重視します。一方、IT営業はシステム開発やインフラ構築、ハードウェアなど幅広い商材を扱い、プロジェクト単位での提案が中心となります。
両者に共通するのは、デジタル化やDXの推進により市場が急速に拡大している点です。企業のIT投資は年々増加しており、SaaS市場は2025年には1兆円を超えると予測されています。こうした成長市場で働くことは、高い需要と安定したキャリアを得られる大きなメリットとなります。
SaaS営業の特徴とビジネスモデル
SaaS営業の最大の特徴は、サブスクリプション型のビジネスモデルにあります。従来の営業が「売り切り型」で契約時に売上が確定するのに対し、SaaS営業では月額または年額の継続課金により、長期的な顧客関係から収益を生み出します。そのため、契約獲得だけでなく、契約後の顧客満足度向上や解約防止、アップセル・クロスセルが重要な業務となります。
このビジネスモデルでは「LTV(顧客生涯価値)」が重視されます。一度の契約金額よりも、顧客が契約を継続する期間と、その間に得られる総収益が評価の対象となるため、営業担当者は短期的な売上だけでなく、長期的な顧客成功を考えた提案が求められます。代表的なSaaS製品には、SalesforceやSlack、Zoomなどがあり、クラウド上で提供されるため導入のハードルが低く、中小企業から大企業まで幅広い顧客層にアプローチできる点も魅力です。SaaS営業とIT営業以外の営業職について詳しく知りたい場合は、「【関連記事】:営業職の種類を完全網羅|16種類の営業タイプから自分に合った営業を見つける方法」で詳しく解説しています。
IT営業の特徴と扱う商材
IT営業は、SaaS製品以外にも多様な商材を扱います。具体的には、企業の基幹システムやWebシステムの受託開発、サーバーやネットワーク機器などのITインフラ構築、パソコンやプリンターなどのハードウェア販売、セキュリティソフトやライセンス販売など、IT関連のあらゆる製品・サービスが対象となります。
これらの商材は、多くの場合プロジェクト単位での提案となり、数百万円から数億円規模の大型案件も珍しくありません。顧客の課題をヒアリングし、最適なソリューションを設計して提案する「ソリューション営業」のスタイルが主流です。SaaS営業と比べると、契約までのリードタイムが長く、技術的な知識や業界知識が深く求められる傾向にありますが、一件あたりの契約金額が大きいため、成果報酬やインセンティブも高額になりやすいという特徴があります。
SaaS営業・IT営業の分業体制と各職種の役割
従来の営業は一人の営業担当者が見込み客の開拓から契約締結、アフターフォローまで全てを担当していましたが、SaaS営業やIT営業では業務を専門化した分業体制が一般的です。主な職種として、インサイドセールス(IS)、フィールドセールス(FS)、カスタマーサクセス(CS)の3つがあり、それぞれが専門性を発揮することで営業活動全体の効率と成約率を高めています。
この分業体制により、各担当者は自分の得意領域に集中できるため、スキルの向上が早く、成果も出やすくなります。また、データに基づいた営業プロセスの改善が可能になり、組織全体としての生産性向上にもつながっています。未経験から営業職にチャレンジする場合、まずインサイドセールスからスタートし、経験を積んでフィールドセールスやカスタマーサクセスにキャリアアップするのが典型的なパターンです。
インサイドセールス(IS)の役割
インサイドセールスは、オフィスや自宅からリモートで営業活動を行う職種です。主な役割は、マーケティング部門が獲得したリード(見込み客)に対して電話やメールでアプローチし、ニーズを確認して商談の機会を創出することです。具体的には、問い合わせフォームから連絡してきた企業への初回ヒアリング、セミナーやウェビナーの参加者へのフォローアップ、休眠顧客の掘り起こしなどを行います。
インサイドセールスの重要なミッションは「質の高いアポイントメント」をフィールドセールスに渡すことです。単にアポイントの数を増やすのではなく、顧客の課題や予算、決裁権者、導入時期などの情報を丁寧にヒアリングし、受注確度の高い商談を設定します。また、CRMやSFAなどのツールを活用してリードの管理を行い、データに基づいたアプローチを実践します。対面営業に比べて移動時間がないため、1日に10〜20件程度のコンタクトが可能で、効率的に多くの見込み客にアプローチできる点が特徴です。詳しくは「【関連記事】:インサイドセールスとフィールドセールスの違いを徹底比較|役割・KPI・スキル」で、インサイドセールスの具体的な業務内容を解説しています。
フィールドセールス(FS)の役割
フィールドセールスは、実際に顧客企業を訪問して商談を行い、契約を締結する役割を担います。インサイドセールスが設定したアポイントメントに基づき、顧客のオフィスや会議室で直接対面して提案活動を行います。具体的には、顧客の課題を深掘りするヒアリング、自社製品・サービスのデモンストレーション、見積書や提案書の作成、契約条件の交渉、契約締結までのプロセスを担当します。
フィールドセールスには、顧客の潜在的なニーズを引き出す質問力、複雑な提案をわかりやすく伝えるプレゼンテーション能力、契約を前に進めるクロージング力が求められます。特にSaaS営業では、短期的な売上だけでなく、顧客が長く使い続けてくれるかどうかを見極めた提案が重要です。また、大型案件では複数の関係者との調整や、社内の技術部門と連携した提案も必要になるため、プロジェクトマネジメントのスキルも活かせます。
カスタマーサクセス(CS)の役割
カスタマーサクセスは、契約後の顧客に対して製品やサービスの活用支援を行い、顧客の成功を実現する職種です。SaaSビジネスでは解約率(チャーンレート)を下げ、LTVを最大化することが収益向上の鍵となるため、カスタマーサクセスの役割は非常に重要です。具体的には、導入時のオンボーディング支援、定期的な活用状況のモニタリング、利用促進のための提案、トラブルや疑問への対応などを行います。
さらに、カスタマーサクセスは既存顧客に対するアップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連製品の追加販売)の役割も担います。顧客が製品を十分に活用し、明確な成果を実感している状態を作り出すことで、自然と契約の拡大や更新につながります。データ分析を活用して、利用状況が低下している顧客を早期に発見し、能動的にサポートするプロアクティブな姿勢が求められます。顧客の成功が自社の成功につながるという考え方は、従来の営業にはなかった新しい価値観であり、やりがいを感じる人も多い職種です。
SaaS営業・IT営業の具体的な仕事内容
SaaS営業やIT営業の日々の業務は、職種によって大きく異なります。しかし共通しているのは、データやツールを活用した効率的な営業活動と、顧客の課題解決に焦点を当てたソリューション提案です。ここでは、典型的な1日の仕事の流れと、業務で使用する主要なツールについて解説します。
1日の仕事の流れ
インサイドセールスの1日は、朝のチームミーティングから始まります。前日の成果共有や当日の目標設定を行った後、午前中は主に架電やメール送信を行います。1件あたり10〜15分程度の電話で顧客のニーズをヒアリングし、興味を持った企業には商談のアポイントを設定します。午後は午前中の活動をCRMに記録し、フィールドセールスへの引き継ぎ情報を整理します。また、資料送付や追加の問い合わせ対応なども行い、見込み客との関係構築を継続します。営業職全般の1日の流れについて詳しく知りたい場合は、「【関連記事】:営業の1日のスケジュールを徹底解説|朝から夜までのリアルな働き方と時間配分」で詳しく解説しています。
フィールドセールスは、1日に2〜4件程度の商談をこなすのが一般的です。午前中は顧客オフィスでの対面商談や製品デモを行い、午後は別の顧客とオンライン商談、夕方は社内で提案資料の作成や見積書の準備を行います。移動時間を活用してメールチェックや次回商談の準備を行うこともあります。カスタマーサクセスは、既存顧客との定例ミーティング、利用状況のデータ分析、サポート対応、社内の開発チームへのフィードバック共有などを行い、顧客の成功をサポートします。
使用するツールとシステム
SaaS営業・IT営業では、さまざまなデジタルツールを活用して業務を効率化しています。最も重要なのがCRM(顧客関係管理)とSFA(営業支援)システムです。代表的なツールとしてSalesforceがあり、顧客情報、商談の進捗状況、過去のやり取り履歴などを一元管理します。これにより、チーム全体で情報を共有し、引き継ぎや連携がスムーズに行えます。
マーケティングオートメーション(MA)ツールも重要です。HubSpotやMarketoなどのツールは、見込み客の行動(Webサイト訪問、メール開封、資料ダウンロードなど)を追跡し、興味度の高いリードを自動的にスコアリングします。インサイドセールスはこのスコアを参考にアプローチの優先順位を決定します。
さらに、オンライン商談ツール(Zoom、Google Meet)、社内コミュニケーションツール(Slack、Microsoft Teams)、提案資料作成ツール(PowerPoint、Googleスライド)、契約管理ツール(クラウドサイン、DocuSign)など、多様なツールを使いこなすデジタルリテラシーが求められます。これらのツールを効果的に活用できるかどうかが、営業成果に直結します。
SaaS営業・IT営業に必要なスキルと適性
SaaS営業やIT営業で成功するためには、特定のスキルセットと適性が求められます。未経験からチャレンジする場合でも、これらのスキルを意識的に磨くことで活躍の機会が広がります。ここでは、必須スキルとあると有利なスキルに分けて解説します。
必須スキル
第一に求められるのはコミュニケーション能力です。ただし、従来の営業のような「話し上手」だけでなく、顧客の課題を深く理解するための「聴く力」が重要です。顧客が抱える問題や目標を正確に把握し、それに対する最適なソリューションを提案するためには、質問力と傾聴力が不可欠です。
次に論理的思考力です。SaaS営業・IT営業では、顧客の課題を分析し、なぜ自社製品が解決策として適切なのかを論理的に説明する必要があります。特にIT製品は複雑な機能や仕様を持つため、わかりやすく構造化して伝える能力が求められます。
そして、デジタルリテラシーも必須です。CRMやSFA、MAツールなどの営業支援システムを日常的に使いこなす必要があるため、基本的なPCスキルやクラウドサービスへの理解は欠かせません。また、データを見て傾向を読み取り、営業活動に活かす姿勢も重要です。ExcelやGoogleスプレッドシートでの簡単なデータ集計や分析ができると、より効果的に業務を進められます。
あると有利なスキル
IT知識があると、SaaS営業・IT営業では大きなアドバンテージになります。クラウドコンピューティング、API連携、セキュリティ、データベースなどの基礎知識があれば、顧客の技術的な質問に対応でき、技術部門との会話もスムーズになります。完全な技術者レベルの知識は不要ですが、IT用語や基本的な仕組みを理解しておくと提案の質が向上します。
データ分析スキルも有利です。営業活動の成果をデータで可視化し、PDCAサイクルを回すことができれば、継続的な成果改善が可能になります。Google AnalyticsやTableauなどのBIツールを使えると、マーケティングチームとの連携も深まります。
また、英語力も評価されるスキルです。特に外資系のSaaS企業や、グローバル展開している日系IT企業では、海外の本社や顧客とのやり取りが発生することがあります。ビジネスレベルの英語力があれば、キャリアの選択肢が大きく広がり、年収アップのチャンスも増えます。TOEICスコア700点以上を目指すと良いでしょう。
成長市場で働く魅力とキャリアパス
SaaS営業・IT営業の大きな魅力は、成長市場で働けることです。市場の拡大に伴い、求人需要も高く、キャリアアップの機会も豊富にあります。ここでは、業界の成長性とキャリアパスについて詳しく見ていきます。
SaaS・IT業界の市場成長性
日本国内のSaaS市場は急速に拡大しており、2023年には約8,000億円規模に達し、2025年には1兆円を超えると予測されています。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進、リモートワークの普及、業務効率化ニーズの高まりなどが市場成長の背景にあります。特にクラウド型の業務管理システム、コミュニケーションツール、セキュリティソリューションなどの需要が高まっています。
IT業界全体でも、システム開発やインフラ構築の需要は堅調です。企業のIT投資は景気の影響を受けにくく、むしろ不況時こそ業務効率化のためのIT投資が増える傾向があります。また、AIやIoT、クラウドなどの新技術の普及により、新しい市場が次々と生まれており、長期的な成長が見込まれます。こうした成長市場で働くことは、雇用の安定性だけでなく、最先端のビジネスモデルや技術に触れられる貴重な経験となります。
キャリアアップの可能性
SaaS営業・IT営業のキャリアパスは多様です。インサイドセールスからスタートした場合、成果を出せばフィールドセールスへのステップアップが可能です。さらに経験を積めば、セールスマネージャーとしてチームをマネジメントする立場や、営業企画・戦略部門でデータ分析や営業プロセスの設計を担当する道もあります。
また、カスタマーサクセスからプロダクトマネージャーやマーケティング部門へのキャリアチェンジも珍しくありません。顧客の声を最も理解している立場として、製品開発やマーケティング戦略に貢献できるからです。さらに、営業スキルとIT知識を組み合わせて、コンサルタントや事業開発の分野に進む人もいます。
年収面でも、SaaS営業・IT営業は魅力的です。未経験から始めた場合の初年度年収は400万〜500万円程度ですが、成果を出せば入社2〜3年で600万〜800万円、マネージャークラスでは1,000万円以上も十分に狙えます。インセンティブ制度を導入している企業も多く、実力次第で高収入を得られる点も大きなメリットです。営業職全般の年収について詳しく知りたい場合は、「【関連記事】:営業の年収を業界別・職種別に徹底分析|平均460万円から1000万円超えを目指す方法」で詳しく解説しています。
まとめ: SaaS営業・IT営業で成長市場でのキャリアを築こう
SaaS営業とIT営業は、サブスクリプションモデルや分業体制など、従来の営業とは異なる特徴を持つ職種です。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスといった専門化された役割があり、それぞれのキャリアパスが用意されています。必要なスキルはコミュニケーション能力、論理的思考力、デジタルリテラシーが中心で、未経験からでもチャレンジ可能です。成長市場で働く魅力と、スキルを磨けば高収入も狙える点が大きな魅力です。これからのキャリアを考える際には、SaaS営業・IT営業という選択肢をぜひ検討してみてください。
仕事内容・基礎知識
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