法人営業と個人営業の違いを8つの観点で徹底比較|B2BとB2Cの特徴と選び方

営業職への転職を考えているあなたは、「法人営業と個人営業、どちらが自分に向いているのだろう」と悩んでいませんか。同じ営業職でも、法人営業(B2B)と個人営業(B2C)では、仕事の進め方や必要なスキル、年収まで大きく異なります。
この記事では、法人営業と個人営業の違いを8つの観点から徹底比較し、あなたに最適な営業タイプを選ぶための判断材料を提供します。未経験から営業職への転職を成功させるために、まずは両者の違いをしっかり理解しましょう。
法人営業と個人営業の基本的な違い
法人営業と個人営業の最も基本的な違いは、「誰に対して営業するか」という点です。
法人営業(B2B: Business to Business)は、企業や団体などの法人を顧客として営業活動を行います。例えば、オフィス用品メーカーが企業に対して文具や事務機器を販売する、IT企業が業務システムを提案するといった形態です。
一方、個人営業(B2C: Business to Consumer)は、一般消費者を顧客として営業活動を展開します。保険の販売、不動産の仲介、携帯電話ショップでの接客販売などが代表的な例です。
この顧客の違いから、取引規模、意思決定プロセス、営業スタイル、必要なスキル、年収、やりがい、キャリアパスといった様々な要素が変わってきます。本記事では、これらを8つの観点で詳しく比較していきます。「【関連記事】:営業の仕事内容を徹底解説|1日の流れから業務の種類まで未経験者向けガイド」も参考にして、営業の基本的な仕事内容を理解した上で、法人営業と個人営業の違いをご確認ください。
【比較表】法人営業と個人営業の違い一覧
まずは、法人営業と個人営業の違いを一覧表で確認しましょう。8つの観点から両者を比較した結果がこちらです。
観点 法人営業(B2B) 個人営業(B2C) 顧客 企業・団体などの法人 一般消費者(個人) 取引規模 数十万円~数億円 数千円~数百万円 意思決定プロセス 複数の関係者による組織的判断(数ヶ月~1年以上) 本人または家族による個人的判断(数日~数週間) 営業スタイル 論理的提案・ROI重視・ソリューション営業 感情訴求・ベネフィット重視・関係構築営業 必要なスキル 論理的思考力・課題発見力・提案力・プレゼン力 コミュニケーション力・共感力・スピード感・フットワーク 平均年収 450~550万円(安定的) 400~500万円(インセンティブ比重大) やりがい 大型案件成約・企業成長への貢献・戦略的思考 顧客の喜び・即効性・数字の積み上げ キャリアパス 営業管理職・マーケティング・事業企画・コンサル 営業管理職・店舗運営・独立開業・他業種営業
この表を見ると、法人営業は「大きな取引をじっくり進める」タイプ、個人営業は「小さな取引を数多くスピーディーに進める」タイプであることが分かります。それでは、各観点の詳細を見ていきましょう。
- 観点1: 顧客の違い
- 観点2: 取引規模の違い
- 観点3: 意思決定プロセスの違い
- 観点4: 営業スタイルの違い
- 観点5: 必要なスキルの違い
- 観点6: 年収の違い
- 観点7: やりがいの違い
- 観点8: キャリアパスの違い
観点1: 顧客の違い
法人営業と個人営業では、顧客の特性が根本的に異なります。この違いが、営業活動のあらゆる側面に影響を与えます。
法人営業の顧客特性
法人営業の顧客は企業や団体です。意思決定は組織的に行われ、複数の部署や役職者が関与します。担当者、課長、部長、場合によっては役員まで承認を得る必要があるため、論理的な説明と説得力のあるデータが求められます。
また、法人顧客との関係は長期的です。一度取引が始まれば、継続的な発注や定期契約につながることが多く、信頼関係を築くことで安定した売上を確保できます。ただし、関係構築には時間がかかり、担当者の異動にも対応する必要があります。
個人営業の顧客特性
個人営業の顧客は一般消費者です。意思決定は本人または家族で行われ、感情や直感が大きく影響します。「この営業担当者は信頼できそう」「今すぐ必要だ」といった感情的要素が購入の決め手になることも少なくありません。
個人顧客との関係は比較的短期的です。商品やサービスを購入した後は、次の接点が生まれにくいケースもあります。そのため、一人ひとりの顧客と深く関わるというよりも、多くの顧客と接点を持ち、成約率を高めることが重視されます。
観点2: 取引規模の違い
取引規模の違いは、営業活動の進め方やプレッシャーの種類に大きく影響します。
法人営業の取引規模
法人営業の取引規模は、数十万円から数億円まで幅広く、1件あたりの契約金額が大きいのが特徴です。例えば、企業向けのITシステム導入であれば数千万円、オフィスビルの一括清掃契約なら年間数百万円といった具合です。
1件の契約金額が大きい分、失注した際の影響も大きくなります。そのため、案件ごとに綿密な準備と戦略が必要です。一方で、大型案件を1件成約させれば大きな成果となり、年間目標を一気に達成できることもあります。
個人営業の取引規模
個人営業の取引規模は、数千円から数百万円程度です。携帯電話の契約なら数千円から数万円、保険や不動産なら数十万円から数百万円といった範囲になります。
1件あたりの金額は法人営業に比べて小さいため、目標達成には多くの成約件数が必要です。そのため、効率的に多くの顧客と接触し、成約率を高めることが求められます。失注しても1件の影響は比較的小さく、次の顧客にすぐ切り替えられるという精神的な負担の軽さもあります。
観点3: 意思決定プロセスの違い
顧客がどのように購入を決めるかというプロセスは、法人営業と個人営業で大きく異なります。
法人営業の意思決定プロセス
法人営業では、意思決定に複数の関係者が関与します。現場の担当者が商品やサービスを気に入っても、上司の承認、予算部門のチェック、場合によっては経営層の決裁が必要です。このプロセスには数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。
さらに、稟議書の作成、社内プレゼンテーション、複数回の商談といったステップを踏む必要があります。営業担当者は、各関係者のニーズや懸念を把握し、それぞれに適した説明を用意しなければなりません。時間はかかりますが、丁寧に関係を築けば大型契約につながります。
個人営業の意思決定プロセス
個人営業では、意思決定は本人または家族で行われます。複雑な社内手続きはなく、「欲しい」と思えばその場で契約することも可能です。そのため、初回の商談から契約まで数日から数週間で完結することが一般的です。
ただし、個人の判断は感情に左右されやすく、「やっぱりやめておく」と急にキャンセルされることもあります。そのため、顧客の気持ちが高まっているタイミングを逃さず、スピーディーにクロージングすることが重要です。
観点4: 営業スタイルの違い
営業スタイルは、顧客の特性と意思決定プロセスに応じて大きく変わります。
法人営業の営業スタイル
法人営業では、論理的な提案とROI(投資対効果)の提示が重視されます。「この商品を導入することで、御社のコストが年間○○万円削減できます」「業務効率が○%向上します」といったデータに基づく説明が求められます。
また、ソリューション営業と呼ばれるスタイルが主流です。これは、顧客の課題を深く理解し、その解決策として自社の商品やサービスを提案する方法です。単なる商品説明ではなく、顧客のビジネスに貢献するパートナーとしての立ち位置を確立することが重要です。
個人営業の営業スタイル
個人営業では、感情への訴求とベネフィット(利益)の強調が効果的です。「この保険に入っていれば、万が一のときも家族を守れます」「このマンションなら、通勤時間が30分短縮できます」といった、顧客の生活がどう良くなるかを具体的にイメージさせることが大切です。
また、関係構築営業が基本となります。顧客との信頼関係を素早く築き、「この人から買いたい」と思ってもらうことが成約の鍵です。親しみやすさ、誠実さ、共感力といった人間的な魅力が重視されます。
観点5: 必要なスキルの違い
営業スタイルの違いから、求められるスキルセットも大きく異なります。
法人営業で求められるスキル
法人営業では、論理的思考力が最も重要です。顧客の業界動向や経営課題を分析し、自社の商品やサービスがどう役立つかを論理的に説明する必要があります。また、課題発見力も欠かせません。顧客自身が気づいていない潜在的な課題を見つけ出し、提案につなげることが求められます。
さらに、提案力とプレゼンテーション力も重要です。複数の関係者に対して説得力のある資料を作成し、分かりやすく説明するスキルが必要です。業界知識や専門的な知識も求められるため、継続的な学習姿勢も大切です。
個人営業で求められるスキル
個人営業では、コミュニケーション力が何より重要です。初対面の顧客と素早く打ち解け、信頼関係を築く能力が求められます。また、共感力も欠かせません。顧客の悩みや希望に共感し、「この人は自分のことを分かってくれる」と感じてもらうことが成約につながります。
さらに、スピード感とフットワークの軽さも重要です。顧客の問い合わせに素早く対応し、多くの顧客と接点を持つための行動力が必要です。断られても気持ちを切り替え、次の顧客にアプローチできる精神的なタフさも求められます。
観点6: 年収の違い
年収は、営業職を選ぶ際の重要な判断材料の一つです。法人営業と個人営業では、年収水準や給与体系に違いがあります。
法人営業の年収
法人営業の平均年収は、450万円から550万円程度です。基本給が比較的高めに設定されており、安定した収入が得られる傾向にあります。インセンティブ(成果報酬)も設定されていますが、基本給に対する比率は個人営業より低めです。
大型案件を成約した際には、特別ボーナスが支給されることもあります。年収1,000万円を超えるのは難易度が高いものの、中堅クラスで600万円から700万円、マネージャークラスになれば800万円以上も目指せます。「【関連記事】:営業の年収を業界別・職種別に徹底分析|平均460万円から1000万円超えを目指す方法」では、業界別の詳細な年収データを掲載しています。
個人営業の年収
個人営業の平均年収は、400万円から500万円程度です。基本給は法人営業よりやや低めですが、インセンティブの比重が大きいのが特徴です。成約件数に応じて給与が大きく変動するため、実力次第で高収入を得られます。
トップセールスになれば、年収1,000万円以上を稼ぐことも可能です。一方で、成績が振るわない月は収入が大きく減少するリスクもあります。安定性よりも、成果に応じた報酬を重視する人に向いています。
観点7: やりがいの違い
やりがいは、営業職を続けるモチベーションの源泉です。法人営業と個人営業では、どのような場面でやりがいを感じるかが異なります。
法人営業のやりがい
法人営業の最大のやりがいは、大型案件の成約です。数ヶ月から1年以上かけて準備した案件が成約した瞬間は、大きな達成感を味わえます。また、企業の成長に貢献できることも魅力です。自分の提案が顧客企業の業績向上につながり、感謝されることは何よりの喜びです。
さらに、戦略的思考を活かせる点も魅力です。市場分析、競合分析、顧客の経営課題の把握など、ビジネス全体を俯瞰する能力が養われます。単なる商品販売ではなく、ビジネスパートナーとしての関係を築けることにやりがいを感じる人が多いです。
個人営業のやりがい
個人営業の最大のやりがいは、顧客の喜びを直接感じられることです。「あなたのおかげで良い買い物ができた」「ありがとう」と直接感謝されることで、仕事の意義を実感できます。また、即効性がある点も魅力です。今日の努力が今月の成績に直結し、成果がすぐに数字で見えるため、モチベーションを維持しやすいです。
さらに、数字を積み上げる達成感もあります。「今月は○件成約できた」「先月より○%増やせた」といった具体的な成果を実感できます。自分の頑張りが直接収入に反映されるため、努力のしがいを感じやすい環境です。
観点8: キャリアパスの違い
営業経験がその後のキャリアにどう活きるかは、法人営業と個人営業で異なります。
法人営業のキャリアパス
法人営業の経験は、幅広いキャリアパスにつながります。最も一般的なのは営業管理職へのステップアップです。チームリーダー、マネージャー、営業部長といった管理職として、組織全体の営業戦略を立案・実行する立場に進めます。
また、マーケティング部門や事業企画部門への転身も可能です。顧客の課題を深く理解した経験は、商品開発や事業戦略の立案に活かせます。さらに、コンサルタントとして独立する人もいます。業界知識と課題解決能力を武器に、企業の経営支援を行うキャリアです。キャリアの選択肢について詳しく知りたい方は、「【関連記事】:営業職の種類を完全網羅|16種類の営業タイプから自分に合った営業を見つける方法」もご参考ください。
個人営業のキャリアパス
個人営業の経験も、多様なキャリアパスを選べます。営業管理職へのステップアップは法人営業と同様で、店舗責任者やエリアマネージャーとして、チーム全体の数字を管理する立場に進めます。
また、店舗運営や独立開業も選択肢です。個人顧客との関係構築スキルは、自分の店舗やサロンを経営する際に大いに役立ちます。さらに、他業種の営業職への転職も容易です。コミュニケーション力やクロージングスキルは、どの業界でも通用する汎用的なスキルだからです。
法人営業に向いている人・個人営業に向いている人
ここまで8つの観点で比較してきましたが、結局のところ「どちらが自分に向いているか」が最も重要です。それぞれに向いている人の特徴を見ていきましょう。「【関連記事】:営業に向いている人の特徴7選|適性チェックリストと未経験からの成功法」では、営業適性について詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
法人営業に向いている人の特徴
法人営業に向いているのは、論理的思考が得意な人です。データや事実に基づいて物事を考え、筋道を立てて説明できる能力が求められます。また、長期的な関係構築が好きな人にも適しています。すぐに結果が出なくても、じっくりと顧客との信頼関係を育てられる忍耐強さが必要です。
さらに、分析や調査が好きな人も法人営業に向いています。業界動向を研究したり、競合分析をしたりする作業が苦にならない人は、戦略的な提案ができます。専門性を高めたい人にもおすすめです。特定の業界や商材の専門家として、深い知識を身につけることができます。
個人営業に向いている人の特徴
個人営業に向いているのは、人と話すのが好きな人です。初対面の人とも気軽に会話でき、すぐに打ち解けられるコミュニケーション能力が重要です。また、フットワークが軽い人にも適しています。多くの顧客と会い、積極的に行動できる活動的な性格が求められます。
さらに、即効性を重視する人も個人営業に向いています。今日の努力が今月の成果につながる環境で、モチベーションを高く保てます。感情的な共感力が高い人にもおすすめです。顧客の気持ちに寄り添い、「この人から買いたい」と思わせる人間的魅力が武器になります。
まとめ: 自分に合った営業タイプを選ぼう
法人営業と個人営業は、同じ営業職でありながら、仕事の進め方や求められるスキルが大きく異なります。
法人営業(B2B)は、企業を相手に大型案件をじっくり進めるスタイルです。論理的思考力と戦略的アプローチが求められ、安定した年収が期待できます。長期的な関係構築を楽しめる人、専門性を高めたい人に向いています。
個人営業(B2C)は、一般消費者を相手に多くの契約をスピーディーに進めるスタイルです。コミュニケーション力と行動力が求められ、成果次第で高収入も目指せます。人と話すのが好きな人、即効性を重視する人に向いています。
どちらが優れているということはありません。大切なのは、あなたの性格、スキル、キャリア志向に合った営業タイプを選ぶことです。本記事で紹介した8つの観点を参考に、自分に最適な営業職を見つけてください。未経験から営業職への転職を成功させるための第一歩として、まずは自分の適性を見極めましょう。
法人営業と個人営業以外にも、営業職にはさまざまな分類があります。「【関連記事】:インサイドセールスとフィールドセールスの違いを徹底比較|役割・KPI・スキル」や「【関連記事】:ルート営業と新規営業の違いを徹底比較|既存顧客フォローと新規開拓の特徴」も参考にして、自分に合った営業スタイルを見つけてください。
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