人事事務の仕事内容を徹底解説｜採用・労務管理のスペシャリスト
著者: MeTimeキャリア編集部人事事務は、企業の人材管理を支える専門的な事務職です。採用サポートから給与計算、社会保険手続きまで、従業員に関するあらゆる業務を担当しています。この記事では、人事事務の具体的な仕事内容、必要なスキル、そしてキャリアの発展パスについて詳しく解説します。一般事務との違いを理解し、人事事務としてのキャリアを検討している方や、未経験からのキャリアチェンジを考えている方、さらには事務職の専門性を深めたいと考えている方に役立つ情報をお届けします。
人事事務とは？基本的な役割と位置づけ
人事事務とは、企業における人材管理に関する事務業務全般を担当する職種です。従業員の採用から退職まで、人に関わるあらゆる手続きやデータ管理を行い、企業の人事機能を後方から力強くサポートします。採用、配置、異動、退職に至るまでの人事関連業務を支える実務の中核を担います。
企業にとって人事事務は、経営資源である「ヒト」を適切に管理するための重要な役割を果たしています。労働法規や社会保険制度に基づいた正確な手続きを行うことで、従業員が安心して働ける環境を整え、企業のコンプライアンス遵守にも貢献しているのです。
人事部門では、採用・教育・評価などの戦略的業務を担当する人事企画と、給与計算や社会保険手続きなどの実務を担当する人事事務に分かれることが多くあります。人事事務はバックオフィス業務の専門家として位置づけられており、企業の適切な人事運営に欠かせない重要な職種です。
人事事務と一般事務・労務事務の違い
人事事務と一般事務の最も大きな違いは、業務の専門性と扱う情報の機密性です。一般事務が書類作成やデータ入力、電話対応など幅広い業務を担当するのに対し、人事事務は労働法規や社会保険制度に関する高度な専門知識を必要とします。
人事事務は従業員の個人情報や給与情報など機密性の高いデータを扱うため、情報管理能力も重要です。労務事務との区別について、企業によって明確な定義がない場合もありますが、一般的には労務事務が労働時間管理や安全衛生管理などに特化しているのに対し、人事事務は採用から退職まで人事に関わる幅広い業務全体を担当する傾向にあります。一般事務の仕事内容をより詳しく知りたい方は「一般事務の仕事内容を徹底解説｜未経験でも分かる業務ガイド」をご参照ください。
人事事務の主な仕事内容【5つの業務領域】
人事事務の業務は大きく5つの領域に分けられます。それぞれの業務について、具体的な内容を見ていきましょう。
採用サポート業務
採用サポート業務では、求人票の作成・掲載、応募者対応、面接日程調整など、採用活動全体をサポートします。求人媒体への求人情報登録や更新、応募者へのメール対応、面接会場の準備、面接結果の通知なども含まれます。
内定者に対しては、入社承諾書の送付や入社前オリエンテーション案内、必要書類の確認などを行います。採用担当者と応募者の間に立つパイプ役として、スムーズなコミュニケーションが重要な責務です。
新卒採用と中途採用では手続きやスケジュールが大きく異なるため、それぞれの採用フローを正確に理解し、適切なタイミングで対応することが重要な役割として求められます。
入退社手続き
入社手続きでは、雇用契約書の作成、労働条件通知書の発行、社会保険の加入手続き、社員番号の付与、社員証の発行などを行います。新入社員が初出社日からスムーズに業務を開始できるよう、PCやメールアドレスの準備なども部門間で連携して進めます。
退職手続きでは、退職届の受理、社会保険の喪失手続き、離職票の発行、退職証明書の作成などを担当します。また、社員証やPC、名刺などの返却確認、最終給与や退職金の計算確認なども重要な業務です。
入退社に関わるこれらの手続きは法定期限が定められているものが多く、期限を厳守しながら正確に処理することが何より重要な役割として求められます。
給与計算・賞与処理
給与計算業務は、人事事務の中でも特に正確性が求められる重要な業務です。毎月の勤怠データを基に、基本給、残業代、各種手当を計算し、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税などの控除額を細かく算出します。
計算が完了すると、給与明細を作成して従業員に配布し、銀行への振込データを作成します。年2回程度の賞与計算についても同様のプロセスで行いますが、社会保険料率や所得税の計算方法が月給と大きく異なるため特に注意が必要です。
さらに年末調整では、従業員から提出された扶養控除申告書や保険料控除申告書を基に1年間の所得税を精算します。この業務は税務上も重要であり、正確な処理が求められます。
社会保険・労働保険の手続き
社会保険手続きでは、健康保険・厚生年金保険の加入・喪失手続き、扶養家族の異動手続き、産前産後休業や育児休業に関する各種申請などを行います。毎年7月には算定基礎届の提出、年度更新時には労働保険料の申告など、定期的で重要な手続きを担当しています。
従業員が結婚や出産、住所変更などのライフイベントを迎えた際には、速やかに関連する変更手続きを行う必要があります。また、従業員が病気や怪我で休業する際の傷病手当金申請サポートや、出産に関連する給付金申請なども重要な役割です。
これらの手続きは年金事務所やハローワークなど複数の行政機関との連携が必要で、電子申請システム（e-Gov）を活用して効率的に処理することが標準的になっています。
勤怠管理・労務管理
勤怠管理では、タイムカードや勤怠管理システムのデータを確認し、労働時間、残業時間、休暇取得状況を正確に把握します。労働基準法で定められた労働時間の上限を超えていないか、有給休暇の取得状況は適切かなどを細かくチェックしながら、法令遵守を徹底します。
また、従業員名簿や出勤簿などの法定帳簿を適切に整備・保管し、就業規則の改定時には従業員への周知と労働基準監督署への届出を行う責務があります。長時間労働が発生している部署があれば、人事担当者に速やかに報告してアラートを上げることで、従業員の健康と安全を守る重要な役割を果たしています。
人事事務に必要なスキルと知識
人事事務として活躍するには、専門的な知識と実務スキルの両方が欠かせません。求められるスキルを以下の3つの観点から詳しく見ていきましょう。
労働法規・社会保険の基礎知識
人事事務の業務を正確に行うには、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法などの労働法規の基礎知識が不可欠です。労働時間、休憩、休日、有給休暇、解雇などに関する法的ルールを理解していなければ、企業のコンプライアンス違反につながるリスクがあります。
また、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つの社会保険制度について、加入条件や保険料の計算方法、給付の仕組みを深く理解することが重要です。これらの制度は頻繁に改正されるため、業界ニュースや通知に目を配り、常に最新情報を習得する姿勢が不可欠です。
実務では社会保険労務士などの専門家と連携することもありますが、自身が基礎知識を持つことで効果的なコミュニケーションが可能になり、業務全体の質を高めることができます。
PCスキルと専門ソフトの操作
人事事務では、ExcelやWordなどの基本的なOfficeソフトのスキルが必須です。特にExcelは給与計算や各種データ集計の中核となるツールであり、関数（VLOOKUP、SUMIF、IFなど）やピボットテーブルを自在に操作できることが望ましいです。
給与計算ソフト（freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与、奉行シリーズなど）、勤怠管理システム、人事情報管理システムなどの専門ソフトウェアの操作スキルも重要です。これらのシステムは企業によって異なりますが、基本的なPC操作スキルがあれば、入社後に着実に習得することができます。
さらに、年金事務所への書類提出などで必要な電子申請システム（e-Govなど）の操作スキルも、現代の人事事務には欠かせないスキルとなっています。こうしたスキルを習得したい方は「事務職に必要なExcelスキル｜必要なレベルと学習方法」や「事務職に必要なスキル｜PC操作から対人スキルまで完全ガイド」をご参照ください。
コミュニケーション能力と正確性
人事事務は全従業員と関わる重要な職務であるため、丁寧で分かりやすいコミュニケーション能力が不可欠です。給与や社会保険に関する従業員からの様々な問い合わせに対して、複雑な仕組みを専門用語を避けながら丁寧に説明し、納得してもらうスキルが強く求められます。
個人情報や給与情報といった機密性の高いデータを扱うため、守秘義務を厳守する職業倫理が必須です。データ入力ミスや計算ミスは従業員の生活に直結する影響を与えるため、細部に注意を払う正確性と複数による確認体制が重要な資質となります。
さらに期限管理能力も必須スキルで、給与計算や社会保険手続きなど期限が厳格に定められた業務を確実に期日までに完了させる計画性と実行力が求められます。
人事事務のキャリアパスと将来性
人事事務で身につけた専門知識と実務経験は、キャリアの発展に向けた強固な基盤となります。
人事担当者・労務管理士への発展
人事事務で実務経験を重ねることで、人事企画、採用担当、教育研修担当など、より戦略的な人事業務へステップアップする機会が広がります。採用戦略の立案、人事制度の設計、組織開発など、企業全体の人材戦略に携わる仕事へと発展させることが可能です。
社会保険労務士の資格取得による専門性の強化も有効な選択肢です。社会保険労務士は企業の労務コンサルタントとして活躍でき、さらには独立開業して複数企業をサポートするという独立キャリアも選択できます。
人事関連の資格としては、社会保険労務士のほか衛生管理者、メンタルヘルス・マネジメント検定、キャリアコンサルタントなどがあり、これらは専門性を客観的に証明する有力な手段となります。事務職のキャリアアップについて詳しく知りたい方は「事務職でキャリアアップ｜昇進・年収アップの実践ガイド」をご参照ください。
企業規模別の働き方の違い
大企業の人事事務は業務が細分化されているため、給与計算専門、社会保険手続き専門など特定領域を極めるスペシャリストとしてのキャリアを築けるます。システム化も進んでおり、複雑で大量のデータを効率的に処理する実務スキルが自然と身につく環境です。
一方、中小企業では採用から給与計算、社会保険手続きまで、人事業務全体を一人で幅広く担当することが多いため、全領域を網羅するゼネラリストとしての成長が期待できます。また経営層との距離が近く、人事施策の提案や実行に裁量を持って関わることができるのが大きな特徴です。
両者のキャリア形成は全く異なりますが、自分が特定領域の深い専門性を目指すのか、それとも幅広い経験と視点を身につけたいのかで、最適な企業規模を選択することが重要です。
まとめ: 人事事務で専門性を身につけるために
人事事務は、採用サポート、入退社手続き、給与計算、社会保険手続き、勤怠管理という5つの業務領域を通じて、企業の人材管理を支える極めて重要な職種です。労働法規や社会保険制度の深い専門知識、PCスキル、正確性、そしてコミュニケーション能力が求められますが、これらのスキルは実務経験を通して着実に習得できるものばかりです。
人事事務で積んだ実務経験は強い資産となり、人事企画担当者や社会保険労務士といったより高度な職務へのキャリア発展につながります。こうした発展性を持つ職種であり、専門性を深めたい方は資格取得でキャリアを磨き、幅広い経験を求める方は中小企業で多様な業務に関わるなど、自分のキャリアビジョンに合わせた働き方の選択が可能です。
人事事務に興味がある方は、まず労働法規や社会保険の基礎知識を学び、Excelなどの実務ツールのスキルを磨くことから始めることをお勧めします。未経験からでも挑戦できる求人が豊富にあり、事務職全体の中でも専門性が高く、かつ確かな将来性を備えたキャリアパスとして、人事事務は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
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