女性ITエンジニアのリアル｜働きやすさとキャリア形成

公開日: 2025年11月28日更新日: 2025年11月30日

著者: MeTimeキャリア編集部

「ITエンジニアとして働きたいけど、女性でも活躍できるのかな」「結婚や出産後も仕事を続けられるか不安」そう感じている方は多いのではないでしょうか。

IT業界は他の業種に比べて柔軟な働き方が浸透しており、女性にとっても働きやすい環境が整いつつあります。リモートワークやフレックス制度を活用すれば、ライフステージが変わってもキャリアを継続できる可能性が十分にあります。

実際、IT業界の女性比率は年々増加しており、産休・育休の取得率は95%以上、復職率も85〜90%と他業種を大きく上回っています。技術スキルを身につければ、年齢や性別に関わらず正当に評価される環境が整っているのです。

この記事では、女性ITエンジニアの実態をデータで明らかにし、ワークライフバランスの実現可能性、産休・育休制度の実際の運用状況、具体的なキャリアパス事例まで、女性ならではの関心事項を詳しく解説します。ITエンジニアとしてのキャリアを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

女性ITエンジニアの現状｜データで見る実態

女性ITエンジニアを取り巻く環境について、客観的なデータから現状を把握しましょう。業界全体の女性比率、職種別の割合、年収など、具体的な数字で見ていきます。

IT業界の女性比率と推移
職種別の女性エンジニア割合
女性ITエンジニアの平均年収

IT業界の女性比率と推移

IT業界全体における女性エンジニアの比率は約20%前後です。経済産業省の調査によると、2023年時点でIT技術者に占める女性の割合は19.8%で、10年前の15.2%から着実に増えています。

大手IT企業やWeb系企業では女性採用を積極的に進めており、新卒採用の女性比率が30%を超える企業も珍しくありません。[Google](https://careers.google.com/ “Google採用情報”)や[Microsoft](https://careers.microsoft.com/ “Microsoft採用情報”)などグローバル企業では、ダイバーシティ推進の一環として女性エンジニアの採用目標を公開しており、日本企業もこの流れに追随しています。

また、経済産業省や総務省が主導する「女性デジタル人材育成プラン」により、教育段階からIT分野への女性進出を後押しする施策も展開されています。業界全体として女性エンジニアの活躍推進が加速している状況です。

職種別の女性エンジニア割合

職種によって女性エンジニアの割合には違いがあります。

職種別の女性比率を見る

システムエンジニア(SE)：約25%
Webデザイナー・フロントエンドエンジニア：約35%
インフラエンジニア・ネットワークエンジニア：約15%
プロジェクトマネージャー(PM)：約18%
データサイエンティスト・AIエンジニア：増加傾向

Webデザイナーやフロントエンドエンジニアでは女性比率が比較的高い一方、インフラ系では低めの傾向があります。この背景には、フロントエンド開発がデザインとの親和性が高く、視覚的な成果物を作れることが女性に人気である点が挙げられます。

管理職への登用はまだ発展途上ですが、近年はデータサイエンスやAI分野での女性進出も目立っています。統計学やデータ分析のバックグラウンドを持つ女性がデータサイエンティストとして活躍するケースが増えており、新しい技術領域での女性の可能性が広がっています。

女性ITエンジニアの平均年収

女性ITエンジニアの平均年収は約450万円〜550万円です。年齢とスキルに応じて着実に収入が上がっていきます。

年齢別・職種別の年収を見る

年齢別平均年収

20代：約380万円
30代：約500万円
40代：約620万円

職種別平均年収

プロジェクトマネージャー・上級SE：600万円以上
スペシャリスト職：700万円以上

男女間の賃金格差は他業種に比べて小さく、同じスキルレベルであれば概ね同等の評価を得られる環境です。IT業界では成果物やスキルが明確に可視化されるため、性別による評価の偏りが生じにくいという特徴があります。

また、フリーランスエンジニアとして独立した場合、年収1000万円以上を稼ぐ女性エンジニアも珍しくありません。スキル次第で収入の上限がないのも、IT業界の大きな魅力です。

「【関連記事】：ITエンジニアの年収｜年代・職種・業種別の給与実態を徹底解説」

ワークライフバランスの実現可能性

IT業界はテクノロジーを活用した柔軟な働き方が浸透しており、女性にとってもワークライフバランスを実現しやすい環境です。リモートワーク、フレックス制度、残業時間など、具体的な実態を見ていきましょう。

リモートワーク・フレックス制度の普及状況
女性エンジニアの平均残業時間
実際の働き方事例

リモートワーク・フレックス制度の普及状況

IT業界のリモートワーク導入率は約75%で、全業種平均の約40%を大きく上回っています。特にソフトウェア開発やWeb系企業では、週3日以上のリモートワークを認める企業が60%を超えています。

フレックスタイム制度の導入率も約68%と高く、コアタイム(必須勤務時間)を10時〜15時に設定し、出退勤時間を柔軟に調整できる企業が主流です。この柔軟性のおかげで、育児や介護との両立がしやすく、通勤時間を削減して自己研鑽の時間も確保できます。

女性エンジニアの平均残業時間

女性ITエンジニアの平均残業時間は月20〜30時間程度で、他業種と比較して特別多いわけではありません。プロジェクトの繁忙期には月40時間程度になることもありますが、多くの企業で残業削減の取り組みが進んでおり、36協定の上限を厳守する動きが強まっています。

時短勤務を利用している女性エンジニアの場合、残業はほとんど発生しないか、リモートワークで調整できるケースが大半です。成果物ベースで評価されるため、効率的に働けば労働時間をコントロールしやすい職種と言えます。

実際の働き方事例

子育て中の女性エンジニアAさん(32歳、Web系企業勤務)のスケジュールを紹介します。

1日の流れ

7時：起床
8時：在宅で業務開始
12時〜13時：昼休憩
15時：勤務終了、保育園のお迎え
17時〜20時：夕食・入浴
21時〜23時：「スプリット勤務」で再び業務

フルタイム勤務でありながら、柔軟な時間調整で育児との両立を実現しています。こうしたライフスタイルに合わせた働き方ができるのは、IT業界ならではのメリットです。

Aさんは「通勤がない分、朝の時間に余裕ができ、子どもとゆっくり過ごせるようになった」と話しています。また、オンライン会議がメインになったことで、育児中でも重要なプロジェクトに関わり続けられる点も、キャリアを継続する上で大きな支えになっているそうです。

「【関連記事】：ITエンジニアの1日｜職種別スケジュールと働き方を徹底解説」

産休・育休制度の実態と復職後のキャリア

女性のキャリア継続で最も重要なのが、産休・育休制度の充実度と復職後のサポート体制です。IT業界における実際の取得率、復職状況、企業のサポート内容を見ていきましょう。

産休・育休の取得率と期間
復職率とキャリアへの影響
育児中のサポート体制

産休・育休の取得率と期間

IT業界における女性の産休・育休取得率は約95%以上と非常に高い水準です。特に従業員100名以上の企業では、ほぼ100%の取得率となっています。

育休の平均取得期間は約10〜12ヶ月で、1年半〜2年取得するケースもあります。大手IT企業では法定を上回る独自の育児休業制度を設けており、給付金の上乗せや休業期間の延長オプションを提供する企業も増えています。男性の育休取得も推奨されており、夫婦で育児を分担しやすい環境です。

復職率とキャリアへの影響

育休後の復職率は約85%〜90%と高く、他業種平均の約70%を大きく上回っています。

復職後の配置状況を見る

育休前と同じまたは類似のポジション：約70%
より柔軟な働き方ができる部署へ異動：約20%
キャリアチェンジを選択：約10%

給与面では、復職直後は時短勤務による減額がありますが、フルタイムに戻った後は育休取得による不利益はほとんどありません。むしろ、育休中にオンライン学習で新しいスキルを習得し、復職後にキャリアアップした事例も多数報告されています。

育児中のサポート体制

IT企業の育児サポート制度は年々充実しています。

主なサポート制度を見る

勤務制度

時短勤務制度(子どもが小学校卒業まで利用可能)：約60%の企業
在宅勤務との併用：約75%の企業

金銭的サポート

ベビーシッター費用補助：月2万円〜5万円
企業内保育所の設置
認可外保育所利用時の費用補助

その他のサポート

子どもの看護休暇の有給化
復職前の慣らし勤務期間
先輩ママエンジニアによるメンター制度

これらのサポートにより、安心して仕事と育児を両立できる環境が整いつつあります。

特に注目すべきは、IT企業の多くが「復職後のキャリア形成」を重視している点です。育児中だからといって重要な仕事から外されるのではなく、時短勤務やリモートワークを活用しながら、スキルを活かせるポジションで活躍できる仕組みが整っています。これは、IT業界が慢性的な人材不足であることも背景にあり、女性エンジニアの継続的な活躍を企業側も強く望んでいるためです。

女性ITエンジニアのキャリアパス｜ロールモデル事例

女性ITエンジニアとしてどのようなキャリアを築けるのか、実際の事例を交えながら具体的なキャリアパスを紹介します。技術者としての成長、マネジメント職、独立という選択肢まで、多様な可能性を見ていきましょう。

エンジニアとしてのスキルアップパターン
マネジメント職への昇進事例
フリーランス・起業という選択肢

エンジニアとしてのスキルアップパターン

技術スペシャリストとして成長したBさん(35歳)の事例を紹介します。

Bさんのキャリア

新卒でSEとして入社、Webアプリケーション開発に従事
5年目：シニアエンジニアに昇格
クラウドアーキテクトの資格を取得
現在：社内のクラウド移行プロジェクトをリード
年収：750万円

技術的な専門性を高めることで、マネジメント職に就かなくても高い評価と報酬を得ています。オンライン学習プラットフォームや技術カンファレンスへの参加で継続的にスキルアップを図っており、育休中も[Udemy](https://www.udemy.com/ “オンライン学習プラットフォーム”)で機械学習を学習していました。

「【関連記事】：ITエンジニアのキャリアパス｜3つの方向性と10年後の姿」

マネジメント職への昇進事例

プロジェクトマネージャーとして活躍するCさん(38歳)のキャリアを見てみましょう。

Cさんのキャリア

入社7年目：チームリーダーに抜擢
10年目：PM(プロジェクトマネージャー)に昇進
出産・育休を経て復職
現在：20名規模のチームを統括、年収850万円

「技術力だけでなくコミュニケーション能力や調整力が評価された」と語るCさん。リモート中心の働き方を活用しながらプロジェクト管理業務を継続しており、女性ならではの細やかな配慮がチーム運営に活きていると感じています。

大手SIerでは女性管理職比率の向上を目指しており、昇進のチャンスは確実に増えています。

フリーランス・起業という選択肢

フリーランスエンジニアとして独立したDさん(33歳)の事例も参考になります。

Dさんのキャリア

大手IT企業で6年間の実務経験
結婚を機にフリーランスに転身
Web開発を中心に複数のクライアントと契約
月収：60万円〜80万円

「自分で仕事量をコントロールでき、育児との両立がしやすい」と満足度は高く、将来的には自社サービスの開発も視野に入れています。IT業界ではリモート案件が豊富で、スキルさえあれば場所や時間に縛られない働き方が実現可能です。

起業支援プログラムや女性起業家向けの補助金制度も充実しており、独立のハードルは以前より下がっています。

「【関連記事】：ITエンジニアのスキルアップ｜成長を加速させる7つの施策」

女性が直面する課題と解決策

女性ITエンジニアとして働く上で直面する課題と、それらを乗り越える具体的な対処法を解説します。

男性中心の職場環境への適応
スキル習得とキャッチアップの工夫

男性中心の職場環境への適応

IT業界では依然として女性エンジニアは少数派で、チーム内で唯一の女性というケースも珍しくありません。「技術的な議論で意見を言いにくい」「コミュニケーションスタイルの違いに戸惑う」といった声が聞かれます。

効果的な対処法

女性エンジニアのコミュニティへの参加が有効です。[Women Who Code](https://www.womenwhocode.com/ “女性エンジニアのグローバルコミュニティ”)や[Girls in Tech Japan](https://japan.girlsintech.org/ “日本の女性テック系コミュニティ”)などのコミュニティに参加すると、同じ立場の仲間との交流で孤独感が軽減され、キャリアのヒントも得られます。

また、社内でメンター制度を活用し、ロールモデルとなる先輩女性エンジニアに相談できる環境を作ることも重要です。