飲食業界への新卒就職｜初任給・待遇・キャリアプラン

公開日: 2025年11月28日更新日: 2025年11月30日

著者: MeTimeキャリア編集部

飲食業界への新卒就職を検討している学生の皆さんにとって、初任給や待遇、将来のキャリアプランは大切な判断材料ですよね。「飲食業界は厳しい」というイメージがある一方で、若いうちから責任ある仕事を任され、早期にキャリアアップできる魅力も確かに存在します。

この記事では、飲食業界の初任給や離職率といった現実的なデータに基づきながら、新卒入社後のキャリアパスや企業選びのポイントを詳しく解説します。厳しい現実も正直に伝えつつ、働き方改革による業界の変化や、この業界ならではのやりがいについても紹介。新卒で飲食業界を目指すかどうかを判断するための材料として、ぜひお役立てください。

飲食業界は他の業界と比べて新卒採用が活発な業界です。特に大手外食チェーンでは毎年数十名から数百名規模の新卒採用を行っており、未経験者でも安心してスタートできる研修体制が整っています。一方で、業界特有の厳しさもあるため、採用の現状を正しく理解することが大切です。

主要企業の採用人数

大手外食チェーンの採用規模は企業によって大きく異なります。すかいらーくグループやゼンショーホールディングスといった全国展開の大手企業では、毎年100名以上の新卒を採用。中堅規模のレストランチェーンなら10〜50名程度が目安です。

業態によっても採用人数は変わり、成長路線を進めている企業ほど採用が活発な傾向にあります。新卒採用に力を入れている企業は研修体制も充実しているので、未経験からでも着実に成長できる環境が整っています。「【関連記事】：飲食業界への働き方改革｜週休2日制と残業削減の実態」も参考にして、業界全体の変化を理解しておきましょう。

求められる人物像

飲食業界が新卒に最も求めるのは、「人と接することが好き」という基本的な素質です。お客様と直接関わる仕事なので、笑顔で自然にコミュニケーションできる人が重視されます。また、チームワークを大切にできることも欠かせません。キッチンとホール、正社員とアルバイトが一緒に店舗を回すため、協調性のある人が求められます。

加えて、体力とストレス対応力も重要です。立ち仕事が中心で、ピーク時は忙しさが続くため、体力に自信のある人が向いています。さらに、「店長を目指したい」「マネジメント経験を積みたい」といった成長意欲も高く評価されます。飲食店でのアルバイト経験がある学生は、その実績を活かせるので選考で有利な傾向があります。

新卒と中途の違い

新卒入社の大きなメリットは、同期と一緒に体系的な研修を受けられることです。中途採用は即戦力が前提なので、基礎教育期間が短いのが一般的。その点、新卒なら数ヶ月の研修期間で段階的に業務を習得できるため、未経験でも心配なくスタートできます。同期という仲間の存在も、厳しい環境を乗り切る大きな支えになります。

飲食業界の初任給と待遇

初任給の相場
昇給・賞与の仕組み
福利厚生の内容

飲食業界への就職を考えるなら、給与や待遇の現実をしっかり把握しておくことが大切です。大卒新卒の初任給から昇給体系、福利厚生まで、実際のデータに基づいて詳しく解説していきます。

初任給の相場

飲食業界の大卒新卒初任給は、月給20万〜22万円が一般的です。大手外食チェーンなら21万円前後が多く、加えて住宅手当や通勤手当が付くケースもあります。ただし他業界と比べるとやや低めで、初年度の年収は250万〜300万円程度が目安。

都市部への配属なら住宅手当が手厚く、地方勤務より実質手取りが高くなる傾向にあります。また業態でも差があり、高級レストランやホテル系は高めの初任給を設定している一方で、ファストフードやカフェチェーンは低めな傾向です。

初任給だけ見ると決して高くはありませんが、飲食業界は昇進が速いのが特徴。店長クラスなら年収400万円以上、エリアマネージャーなら年収500万〜600万円も目指せます。将来の収入アップ可能性は十分にあります。

昇給・賞与の仕組み

飲食業界の昇給は役職昇進で大きく増える仕組みです。一般スタッフから副店長になると月給2万〜3万円アップ、店長になるとさらに3万〜5万円の昇給が期待できます。つまり年功序列ではなく、実力と昇進で給与が決まる成果主義的なシステムが一般的。

賞与は年2回(夏・冬)の支給が基本ですが、金額は企業や業績で大きく変わります。大手企業なら基本給の2〜4ヶ月分が目安ですが、業績連動型なので店舗の売上達成度で変動。店長以上になると店舗業績が直接賞与に反映されるため、成果を出せば確実に還元される仕組みです。

多くの企業では評価制度が明確で、目標管理制度(MBO)を導入するところも増えています。半年ごとに目標を設定して達成度で昇給・昇格が決まるため、自分の努力が評価されやすい環境と言えます。

福利厚生の内容

大手飲食チェーンは社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)を完備。加えて、住宅手当や家賃補助制度を用意する企業が多く、転勤者には月2万〜3万円程度の住宅補助が支給されることもあります。

飲食業界ならではの福利厚生として従業員割引があります。自社グループの店舗を社員価格で利用できるので食費が浮きます。まかない制度を導入している企業も多く、勤務中の食事が無料または格安で提供されるため、実質的な給与アップになります。

さらに、資格取得支援や研修制度も充実。調理師免許や食品衛生責任者の取得費用を負担したり、マネジメント研修や海外研修機会を提供する企業も増えています。福利厚生は企業で大きく異なるので、就職活動時に必ず確認しましょう。

飲食業界の離職率と課題

業界の離職率データ
離職の主な理由
働き方改革の取り組み

飲食業界を検討する上で避けられないのが、高い離職率という現実です。ただし、業界全体で改善に取り組んでおり、働き方改革を進める企業も増えています。正直に現状を伝えつつ、改善の動きも紹介していきます。

業界の離職率データ

厚生労働省の調査によると、飲食業界の大卒新卒者の3年以内離職率は約50.2%。全業界平均の32.8%を大きく上回っています。つまり、新卒入社者の約半数が3年以内に退職しているのが現実。この数字は他業界と比べても非常に高く、飲食業界特有の厳しさを表しています。

離職が最も多いのは入社1年目で、次が2年目。1年目で辞める人の声には「想像していた仕事と違った」「労働環境が厳しすぎる」といった言葉が多く、理想と現実のギャップが大きいことが原因です。

ただし離職率は企業差が大きいのが重要。働き方改革に積極的な企業や研修制度が充実した大手チェーンでは離職率が30%台に抑えられているケースもあり、企業選びが非常に重要になります。「【関連記事】：ブラック飲食店の見分け方｜転職前に確認すべき8つのポイント」で企業の実態をしっかり調べておくことが大切です。

離職の主な理由

最大の理由は長時間労働です。飲食店は営業時間が長く、ピーク時は休憩も取りづらいため、1日10時間以上働くことも珍しくありません。店長クラスになると人手不足をカバーする責任が増し、休日出勤が増えて月の休日が4〜5日という厳しい状況になることもあります。

次に多いのが、休日の不規則さと少なさです。土日祝日が最も忙しい業界なので、友人や家族と休みが合わず、プライベート時間が取りにくくストレスになります。シフト制で連休も取りにくく、旅行計画が立てられない点も離職理由となっています。

さらに、キャリアに対する不安も大きいです。「ずっと店舗で働き続けるのか」「給料は上がるのか」といった疑問から、他業界への転職を選ぶ人も多い。特に明確なキャリアパスを示してくれない企業では、若手の不安が増幅されがちです。

働き方改革の取り組み

ネガティブな面を紹介しましたが、近年は業界全体で働き方改革が進んでいます。大手外食チェーンを中心に、週休2日制導入や営業時間短縮、店舗の省人化が加速。特に深刻な人手不足から「働きやすい環境がなければ人は集まらない」という危機感が生まれ、労働環境の改善に本気で取り組む企業が増えています。

具体的には、ICTシステムやセルフオーダー端末の導入で業務効率を高め、労働時間を削減する取り組みが広がっています。また店舗の人員配置を厚くして、正社員が休みを取りやすい体制を作る企業も増加中。10年前と比べて労働環境は着実に改善しており、今後もこの流れは続くと期待されています。

新卒入社後のキャリアパス

1年目：店舗スタッフ
2-3年目：副店長・トレーナー
3-5年目：店長
5年目以降：エリアマネージャー・本部職

飲食業界の大きな魅力が、明確なキャリアパスと早期のキャリアアップです。他業界では10年かかるマネジメント経験を、飲食業界なら20代で積めます。一般的なキャリアの道筋を紹介しましょう。

1年目：店舗スタッフ

1年目は店舗スタッフとして、接客と調理の基礎を学びます。ホールスタッフとして注文受付や配膳、レジ業務を通じてお客様対応の基本を身につけ、同時にキッチンでの調理補助も経験してメニューの作り方や仕込みを習得。

最初数ヶ月は先輩やアルバイトスタッフに教わりながら仕事を覚え、徐々に一人で任される業務が増えます。1年目後半にはシフト管理や発注業務といった店舗運営のマネジメント業務も携わるように。この時期に基礎をしっかり固めることが、その後のキャリアを左右する重要な期間です。

2-3年目：副店長・トレーナー

2年目からは副店長やトレーナーとして、マネジメントスキルを本格的に学びます。副店長は店長のサポート役として、アルバイト教育、シフト作成、売上管理などを担当。店長が不在時には店舗責任者として動き、トラブル対応や判断力を磨きます。

新人育成も任されるようになります。自分が1年目に学んだ内容を後輩に教えることで、業務をより深く理解できるに。マネジメントの基礎をここで身につけることが、次のステップの店長へのスムーズな成長につながります。

3-5年目：店長

早い人では3年目、一般的には4〜5年目で店長に昇格します。店長は店舗全体の責任者として、売上目標達成、スタッフ育成、顧客満足度向上など、経営者視点で店舗を運営。月給25万〜30万円に賞与を合わせて年収400万円以上を実現できます。

成果を出せば大型店舗や旗艦店の店長を任されたり、店舗開発に携わる機会も。20代で数十名のスタッフをマネジメント経験は、他業界では得難い貴重なキャリアです。「【関連記事】：飲食店マネージャーのキャリアパス｜店長→エリアマネージャー→SV」で詳しいキャリアの進め方を学ぶことができます。

5年目以降：エリアマネージャー・本部職

店長として実績を積むと、複数店舗を統括するエリアマネージャーや本部の専門職へキャリア展開できます。エリアマネージャーは5〜10店舗を担当し、各店舗の売上管理と店長育成を行い、年収は500万〜600万円へ大幅アップ。さらにブロック長やエリア統括を目指せます。

本部職では商品開発、店舗開発、人事、マーケティングなど専門分野への進路もあります。現場経験を活かしながら会社全体の戦略に関わる仕事ができます。また飲食業界で培った経営ノウハウを活かして独立開業する人も多く、将来の選択肢は広がります。

飲食業界で働くやりがいと魅力

お客様の笑顔が見える仕事
若手でも責任ある仕事を任される
将来の独立・開業の道

離職率や労働環境の厳しさを紹介しましたが、飲食業界には他業界にはない大きな魅力があります。この業界で働く価値とやりがいを解説します。

お客様の笑顔が見える仕事

最大の魅力は、お客様の笑顔を直接見られることです。「美味しかった」「ありがとう」という言葉をその場でもらえる仕事は少ない。常連のお客様から感謝されたり、家族連れが楽しそうに食事する姿を見たりすると、大きなやりがいを感じます。

自分が提供した料理やサービスで誰かを幸せにできる実感は、日々の仕事のモチベーションになります。デスクワークでは味わえない、人と人とのつながりが感じられるのが、飲食業界で働く大きな魅力です。「【関連記事】：飲食店マネージャーのやりがい｜現役店長が語る仕事の魅力」では先輩社員の声も紹介しています。

若手でも責任ある仕事を任される

飲食業界は他業界と比べて、圧倒的に早く責任ある仕事が任されます。入社3年目で店長、5年目でエリアマネージャーになるキャリアスピードは他業界では考えられません。若いうちから予算管理やスタッフ育成といった経営者視点の経験を積めることは、将来どの業界に行っても活かせる貴重なスキルです。

また成果主義文化があり、年齢や社歴に関係なく昇進のチャンスがあります。自分の頑張りが目に見える形で報われる環境は、成長意欲の高い若手にとって非常に魅力的です。

将来の独立・開業の道

飲食業界のもう一つのメリットが、独立・開業に必要なノウハウをすべて学べることです。店長経験を積めば、仕入れ、原価管理、人材育成、マーケティングなど、経営に必要なスキルが身につきます。

実際に大手チェーンで数年経験を積んだ後、独立して自分の店を持つ人は多くいます。飲食業界での経験は独立後の成功に直結する実践的なものです。「【関連記事】：飲食業界の将来性｜市場動向とキャリアの展望」も参考に、業界全体のトレンドを理解した上で、将来自分の店を持ちたい人にとって、飲食業界での新卒就職は最適なスタート地点と言えます。

新卒で選ぶべき企業のポイント

労働条件を必ず確認
研修制度が充実している企業
成長企業か安定企業か

飲食業界の就職を成功させるには、企業選びが何より重要です。同じ業界でも企業で労働環境は大きく異なるため、以下のポイントをしっかりチェックして自分に合った企業を選びましょう。

労働条件を必ず確認

最も重要なのが労働条件の確認です。特に週休制度(完全週休2日制か週休2日制か)、月平均残業時間、有給取得率は必ず確認しましょう。完全週休2日制なら年間休日が110日以上で、プライベート時間も確保しやすくなります。

転勤の有無と頻度も重要。全国展開企業は転勤が前提なので、自分のライフプランと照らし合わせて判断が必要です。給与体系(基本給と手当の内訳)や賞与実績も事前に確認すべき。求人票だけでなく、説明会やOB・OG訪問で実際に働く人の声を聞くことで、リアルな労働条件が分かります。

研修制度が充実している企業

新卒入社では研修制度が成長スピードを大きく左右します。入社時研修、店舗配属後のOJT、定期的なフォローアップ研修など、体系的な教育プログラムが整った企業を選ぶべき。特に階層別研修(一般スタッフ→副店長→店長)がしっかりしていると、各段階で必要なスキルを計画的に身につけられます。

資格取得支援制度があるかも確認。調理師免許や食品衛生責任者取得を会社がサポートする企業は、社員成長を重視している証拠です。メンター制度や先輩サポート体制が整った企業なら、困った時に相談しやすく早期離職リスクも低くなります。

成長企業か安定企業か

成長企業と安定企業のどちらを選ぶかも重要です。成長企業は新店舗立ち上げに関わるチャンスが多く、早期キャリアアップ可能。ただし業務量も多く変化への対応力が求められます。

安定企業は確立されたオペレーション・マニュアルがあり、着実にスキル習得できます。福利厚生や労働環境も整った傾向。「チャレンジと成長」を優先するか、「安定と着実なキャリア」を優先するかで、選ぶべき企業タイプが変わります。

飲食業界への就活対策

志望動機の作り方
面接でアピールすべきポイント
インターンシップの活用

飲食業界の選考突破には、業界特有の評価ポイントを理解した準備が不可欠です。志望動機から面接対策まで、実践的なアドバイスを紹介します。

志望動機の作り方

説得力ある志望動機には、「なぜ飲食業界か」「なぜその企業か」を明確に説明することが大切です。「人と接するのが好き」だけでは弱く、具体的なエピソードが必要。例えば「アルバイトでお客様から感謝された経験から、食を通じて人を幸せにしたい」といった実体験に基づいた動機が効果的です。

企業選択理由も具体的に示しましょう。「貴社の〇〇理念に共感」「実際に店舗を利用してスタッフの接客に感動」など、企業研究をしっかり行った上での志望理由を伝えることが大切です。「【関連記事】：飲食店面接対策｜店長・マネージャー候補の志望動機の書き方」も参考に、将来のキャリアビジョンも含めて「5年後に店長として活躍したい」といった具体的目標を語れると好印象です。